男性には大変失礼な話ではあるが,筆者が2011年に大阪大学出版会から『夫源病─こんなアタシに誰がした』を出版して以来,“夫源病”は一般名詞化したようである。2001年に男性更年期外来を開設して以来,600名以上の男性患者を診察してきた経験をもとに発表したもので,まったく根拠がないわけではない。
中高年男性(主に気分・不安障害)を診察する外来であったが,うつ状態の夫の世話をする妻も精神的に追い込まれている場合が少なくないことがわかってきた。妻までくたびれ果てると,夫の治療がうまくいかないばかりか,家庭崩壊にもつながりかねないので,妻のカウンセリングに乗り出した。
体調の悪い妻は既に更年期外来や女性外来に長年通院していたので,女性の診察経験の少ない筆者は,あえて診察することに躊躇したが,一向に妻の病状が改善しないので,夫婦での治療を開始した。治療を開始して間もなく,妻の体調はみるみる回復し,家で引きこもりがちだった方が買い物やジムに通うようになる例もめずらしくない。投薬を継続する例もあるが,多くの妻は3カ月以内に体調が回復する。
一方,夫の場合は体調の回復に1~2年かかる例が多い。夫の体調も2~3カ月で一度は立ち直るが,仕事の取り組み方などの修正をしないまま頑張るため,数回は体調を崩す。しばらくすると,“もう無理はできないな”と感じて,生き方,働き方を修正して落ちつくのであるが,女性よりは修正が下手である。
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