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【識者の眼】「子ども虐待対応:院内虐待対応組織(Child Protection Team)と人材育成」小橋孝介

No.5079 (2021年08月28日発行) P.64

小橋孝介 (松戸市立総合医療センター小児科副部長)

登録日: 2021-08-11

最終更新日: 2021-08-11

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2010年の改正臓器移植法の施行によって、小児の臓器移植が可能となり、臓器提供病院である5類型病院は、「虐待防止委員会等の虐待を受けた児童への対応のために必要な院内体制の整備」および「児童虐待の対応に関するマニュアル等の整備」をすることが法律の中で努力義務化された。これに伴い、2006年の全国調査では10.6%だった院内虐待対応組織(Child Protection Team:CPT)の設置は、2018年の全国調査で94.3%と進んできている。しかしながら、個々のCPTの機能レベルはまちまちであり、年間数例程度の対応しかない医療機関から年間500例を超える対応を行っている医療機関まで様々である。このような中で、それぞれの医療機関においてCPTの機能を評価し、改善、強化していくことが求められている。

CPTの機能評価にあたっては、厚生労働省の研究班が「医療機関ならびに行政機関のための病院内子ども虐待対応組織(CPT:Child Protection Team)構築・機能評価・連携ガイド〜子ども虐待の医療的対応の核として機能するために」(https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002kahn-att/2r9852000002kb4d.pdf)を作成した。この中では、CPTの機能のレベルを「基礎」「発展」「専門」の3つにわけ、24の評価項目について、それぞれのレベルで達成すべき目標が掲げられている。正確ではないものの、概ね年間対応件数が12例未満(月1例未満)だと基礎レベル、53例未満(週1例未満)だと発展レベル、それ以上は専門レベルと捉えてもよいだろう。いずれのレベルにあったとしても、このようなツールを用いて機能評価を行い、改善、強化を続けていく必要がある。

CPTの設置は進んでいる一方で、子ども虐待医学の知識や技術を十分学び、専門レベルの対応が可能な医師は少ない現状がある。米国専門医制度では各種小児科のサブスペシャリティの一つとして位置づけられ、一つの学問体系として子ども虐待医学が成立している。現在日本の卒前医学教育では、子ども虐待に関して系統的に学ぶことはほとんどなく、2020年度よりようやく虐待医学に関する研修の受講が卒後教育の医師臨床研修で義務づけられたところである。今後日本でも子ども虐待医学の専門家を養成していくことが求められる。

小橋孝介(松戸市立総合医療センター小児科副部長)[子ども虐待][子ども家庭福祉][院内虐待対応組織]

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