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【識者の眼】「日本とブラジルの新型コロナ水際対策体験談」南谷かおり

No.5079 (2021年08月28日発行) P.61

南谷かおり (りんくう総合医療センター国際診療科部長)

登録日: 2021-08-11

最終更新日: 2021-08-11

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今回は私事で恐縮だが、必要あってオリンピック開催直前からブラジルに渡航したので体験談を紹介する。私の勤務先は関西国際空港に近いため、検査が可能な平日に働いてから夜中の便で日本を出発した。搭乗に必要な出発前72時間以内の新型コロナウイルスPCR検査陰性証明と、もしもの時のワクチン接種証明書は当院にて発行した。さらに、ブラジル入国には渡航者健康申告フォームへの記載が必要で、事前にメールで提出した。これら全ての書類は日本でも経由地の空港でも搭乗前に確認を受けた。

ブラジル到着後は現在変異株が流行っている国以外は隔離の必要がなく、日本からは、そのまま入国できた。ブラジルは新型コロナウイルス感染症による死者数が世界第2位になった国であり、大都会のサンパウロ市では2月のカーニバル後に感染者数が爆発的に増加したためロックダウンで患者数を抑え、現在事業者は営業時間の短縮はあるものの日中は普通に営業していた。またマスク着用率は大都市以外でも高く、地方でも子供が付けて歩いていた。ブラジルは大統領が経済を優先しコロナはただの風邪だと豪語したのが日本でも話題になったが、死者が増え続けたことで問題は国民にとって身近なものとなり、現在は皆が怖がっているようだった。個人的には感染症以外に、ブラジルを何十年ぶりに襲った寒波で暖房器具もないなかダウンを購入して寝た事が印象に残った。

ブラジル出国にも72時間以内のPCR検査が必要で、サンパウロの日系病院にて行った。さらに帰国には質問票への記載と厚生労働省が定めるアプリを2種類ダウンロードして、14日間の公共交通機関の不使用、自宅等での待機、位置情報の提示、接触アプリの導入に関する誓約書を書かされた。渡航先がブラジルであったため入国時の唾液検査が陰性でも3日間は指定のホテルで隔離となり、その間部屋を一歩も出られず、3度の冷えた弁当は廊下に置かれ、まるで囚人のようだった。3日目の検査も陰性で残りの11日間は自宅隔離となったが、タクシーや公共交通機関が使えないため個別の車で帰らなければならず、国際空港が遠い人はさぞかし大変であろうと思った。これだけ厳重なのに帰宅直前に大阪は4回目の緊急事態宣言となり、感染者数が増え続けている現状になんとも言えない気分になった。

南谷かおり(りんくう総合医療センター国際診療科部長)[外国人診療]

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