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【識者の眼】「新型コロナ感染拡大の中で企業の安全配慮義務と事業継続計画の見直しを」和田耕治

No.5079 (2021年08月28日発行) P.56

和田耕治 (国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)

登録日: 2021-08-16

最終更新日: 2021-08-16

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新型コロナの感染拡大が止まらない状況だが、お盆休みが終わり、企業も再開するところが多い。東京都では、感染者が企業内で出ても積極的疫学調査で訪問することはできない状態になっており、同様の状態は他の地域でも生じている。今後は企業で感染者が出た場合には対応を自分たちで考えなくてはならなくなっている。

これまでとは状況が異なっていることを、産業医だけでなく企業の経営者も理解する必要がある。

8月11日に開催された厚生労働省のアドバイザリーボードでも、今後必要な対策として「職場での感染防止策の強化、会議の原則オンライン化とテレワーク推進(特に基礎疾患を有する方や妊婦など)、有症状者の出社の自粛などを徹底すべき。さらに、少しでも体調が悪い場合、軽い症状でも早めの受診、積極的な検査、適切な療養に繋げることが必要」と示された(https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000818351.pdf)。

業務中に感染した場合には労災の申請ができることになるが、市中での広がりもあるなかで感染経路の特定も難しくなり、認定を受けにくくなる可能性がある。一方で、大規模なクラスターが商業施設でも報告されているように、感染拡大を止められなかった場合で特に重症化したような事例においては、企業としての安全配慮義務が問われる可能性もある。

事業の継続が困難となる可能性もある。既に、電車の運転手の感染によって減便した事例や、ゴミ収集車の運転手の感染によりゴミの収集ができなくなった事例があるが、さらに今後、その他のインフラ従事者にまで影響が及ぶ可能性も想定する必要がある。

重症化しうる基礎疾患を有する方や妊婦などは企業内で感染リスクが低い業務に配置したりテレワークを指示したりする対応が考えられるが、そうした業務がない場合に、仕事の場を奪われることで給与が減ることもありえる。何らかの経済的な補償を政府は考える必要があるのではないか。

一方で、ワクチン接種を既に完了した人も増えており、業務の分担をどうするかなど難しい判断も求められるようになりえる。

今のままでは感染拡大が長期化する可能性があること、そして、企業活動にも影響をすることから、一日でも早く感染者を減らすための方策を政府と企業と市民が一丸となって検討し、一時的にでも実効性のある対策をとることが必要である。

和田耕治(国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)[新型コロナウイルス感染症]

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