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みちのく紅葉登山[なかのとおるのええ加減でいきまっせ!(376)]

No.5087 (2021年10月23日発行) P.68

仲野 徹 (大阪大学病理学教授)

登録日: 2021-10-20

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岩手医科大学にお呼びいただいた。タイミングよく、みちのくの山は紅葉まっ盛りだ。というより、あつかましくも、そのようなシーズンにとお願いしたのである。そして運良く、緊急事態宣言解除の日に出発できた。

旅程はいつも通りの欲張りプランだ。まずは花巻空港へ飛んで、紅葉で有名な栗駒山へ。翌日は岩手山に登って、3日目は八幡平でこれまた紅葉を楽しもうということに。あ、もちろんその後に講義とセミナーを組み入れてありましたからご安心をば。

といっても、すべてがうまくいくとは限らない。1日目は、海上とはいえ台風16号が東北地方へ接近していた。期待できないけれど、まぁ行ってみようということで栗駒山までドライブするも、残念ながら、紅葉しているはずの山は完全に霧の中だった。

2日目の岩手山は快晴! 色づく木々をめでながら相当な急登をこなす。ところが、頂上に近づくと急に霧が出てきた。麓から見ると、おそらく山頂だけが雲の中といった状態だったろう。せっかくだからと登り続けるも、強烈な風に見舞われ始めた。風に向かって歩けないくらいだったから、風速30メートルは優に超していたはずである。

あかん、頂上直下で登頂断念かと思っていたら、今度はみるみるうちに晴れていった。岩手山のような独立峰の天気は本当に変わりやすい。山頂は、富士山と同じく火口をぐるっと回るお鉢巡りになっていて、それを楽しんでから下山して温泉でゆっくり。

翌日は全身の筋肉痛を抱えながら、八幡平の散策に。地元の人によると、まっ盛りまであと数日ということだったが、見事な紅葉を楽しめた。岩手山と並んで八幡平も日本百名山のひとつなのだが、ここは駐車場から20分ほど歩くだけと、百名山のうちでも最もたやすく登れる山のひとつである。

岩手山は登り5時間、下り4時間と、おおよそコースタイム並で歩けたので、64歳という年齢を考えれば満足である。ただ体力的には大丈夫そうなのだが、どうも微妙にバランス感覚が衰えてきている。転けるまではいかないのだけれど、おっと危ないとよろけそうになることが度々であった。

百名山のうち、これで45座に登ったことになる。完全踏破を目指すには、そろそろ本気にならないと無理かもしれない。定年後の来年は、残りの山々を登ることに集中すべきかどうか、真剣に思案中であります。

なかののつぶやき
「八幡平(標高1613m)から眺めた岩手山(標高2038m)。じつに堂々たる見事な山容で、その形から『南部片富士』とも呼ばれています」

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