11月12日の中央社会保険医療協議会総会は、回復期の入院医療や入院関連の横断的課題についても議論した。回復期のうち地域包括ケア病棟では、支払側が期待される3つの役割を担っていない病棟の評価を適正化するよう求めたが、診療側は地域の医療事情などで担う役割に濃淡が出るのはやむを得ないと反対した。
地域包括ケア病棟は、ポストアキュート患者とサブアキュート患者の受け入れ、在宅復帰支援―の3つの役割を担う病棟と位置付けられている。しかし、中には自院の一般病棟からの転棟割合が8割を超えるなど、一部役割しか担っていない病棟もみられることが問題視されている。また、一般病棟からの転棟患者は、自宅等からの入棟患者に比べて状態が安定している割合が高く、医師の頻回な診察が必要な患者の割合が低いことも明らかになっている。
議論で診療側の城守国斗委員(日本医師会常任理事)は、「地域包括ケア病棟入院料・入院医療管理料は3つの役割を均等に果たすことを評価したものではない」と指摘。近隣に在宅療養支援診療所や急性期病院がないといった、地域の医療事情によって担う役割に濃淡が出るのはやむを得ないことだとし、一部役割しか担っていない病棟の評価の見直しに異議を唱えた。
これに対して支払側委員は揃って評価の適正化を訴えた。安藤伸樹委員(全国健康保険協会理事長)は、「役割の一部しか担っていないなど、機能の差を踏まえた評価を検討するべきだ」と主張。その際には一般病棟からの転棟患者は自宅等からの入棟患者に比べて状態が安定している点も考慮するよう求めた。松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は、「3つの役割をバランスよく担っていないから駄目だと言っているのではなく、患者の状態や医療資源の投入量に違いがあるなら、それを勘案した評価があって然るべきではないか」と述べた。
「回復期リハビリテーション病棟入院料」では、新規に届出をする場合の報酬である「入院料5、6」を長期間算定し続けている病棟への対応が論点となった。診療側の城守委員は、前回改定時のリハビリテーション実績指数の引き上げや、新型コロナウイルス感染拡大の影響などを考慮し、「今回は大幅な見直しを行うべきではない」との認識を表明。支払側の安藤委員や松本委員は、「入院料5、6」の算定期間に上限を設定することを提案した。
横断的課題では「救急医療管理加算」などについて議論した。同加算では、「加算1」の算定患者の中に、「意識障害又は昏睡」の指標で、「意識清明」(JCS 0)に該当する患者や、「広範囲熱傷」(burn index)のスコアが0の患者などが一定割合存在することなどから、患者の状態を適正に反映できる基準づくりが課題となっている。
診療側の城守委員は、burn index 0でも、顔面熱傷や気道熱傷の場合は全身管理が必要になるほか、JCS 0の患者でも「非開胸的心マッサージ」のような緊急性が高い処置が行われている実態があることに言及。「指標による評価だけでなく、行われている治療の内容と合わせながら患者の状態を把握する方向での検討が必要だろう」との見方を示した。支払側の松本委員も、「指標と実際に行われている治療をうまく組み合わせた基準を検討するべきではないか」と述べた。