中央社会保険医療協議会の各側委員は12月3日の総会で、医療経済実態調査に関する見解を述べた。支払側は、単月調査の結果をみると、医療機関の経営状態は回復基調にあるとの認識を表明。これに対して診療側は、医療機関は給与費の削減や抑制によってなんとか経営を維持していると反論し、地域医療を守るためにも診療報酬本体のプラス改定は必須だと訴えた。
支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は、新型コロナウイルス感染症関連補助金を含む一般病院の損益差額率について、2020年度は国公立を除いた加重平均値で2.8%の黒字となっており、13年度以降では最も高い水準であるほか、一般診療所の損益差額率も黒字が維持できていると指摘した。
さらに単月調査で、21年6月の損益差額率を前年同月、前々年同月と比較した結果も提示。例えば、個人・一般診療所の場合、21年6月の損益差額率は34.6%となり、20年6月比では4.7ポイントの上昇、19年6月比では0.3ポイントの上昇。法人・一般診療所は、21年6月の損益差額率が8.3%、20年6月比では5.2ポイントの上昇、19年6月比では1.7ポイントの上昇となっていた。このように、診療報酬改定の影響や新型コロナの影響で損益差額率が大きく落ち込んだ20年6月との差は大きいが、19年6月との差は小さくなっており、医療機関の経営状態は仮に補助金を除いたとしても、19年の水準に戻りつつあると結論づけた。
一方、診療側の城守国斗委員(日本医師会常任理事)は、▶20年度の損益差額率はコロナ関連補助金を含めても一般病院はほぼプラスマイナスゼロ、一般診療所は19年度よりも低い水準にとどまる、▶一般病院(国公立を除く)、一般診療所(医療法人)ともコロナ補助金がなければ約半数が赤字だった、▶一般病院、精神科病院、一般診療所(無床)で長期借入金残高が増加した、▶病院、一般診療所とも病院長(または院長)、医師給与は低下、看護職員給与は横ばいで推移―と指摘。コロナ禍での医療機関への手当が十分でなかったことが明らかになったとの見方を示した。
医療機関は給与費の抑制でなんとか経営を維持しているのが現状だとして、「地域医療や国民の安全を守るには適切な財源が必要であり、今回の改定はプラス改定しかあり得ない」と主張した。