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【識者の眼】「第6波に向けて診療を継続するために今こそ取り組みたいこと」和田耕治

No.5099 (2022年01月15日発行) P.59

和田耕治 (国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)

登録日: 2022-01-06

最終更新日: 2022-01-06

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オミクロン株が主流となった第6波が差し迫っている。今こそ取り組んでおきたいことは、①職員のワクチン接種の推進、②発症した職員への対応、③複数の欠勤者が出た場合の診療継続の想定、である。

これまでの2回のワクチン接種においては、辛い副反応を経験しつつも多くの職員に乗り越えていただき、また接種する側も相当な労力を必要とした。オミクロン株の免疫逃避の性質と、時間とともにワクチンの効果が減弱することは既に知られている。厚生労働省の新型コロナのアドバイザリーボードの資料でも、オミクロン株を想定すると人口全体の感染防御のワクチン効果(発症予防効果)は14.3%まで下がっていると報告された(12月28日 西浦先生資料3-3、https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000875166.pdf)。

英国からのブースターの効果についてのデータをみると、3回目の接種を行うことで、7割程度まで発症予防効果が高められている。ただ、持続性については今後の課題である(https://assets.publishing.service.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/1044481/Technical-Briefing-31-Dec-2021-Omicron_severity_update.pdf)。

医療従事者への3回目のワクチン接種は施設によっても進捗が異なっており、年明けからや、2月にかけて順々に行うなど様々であるようだ。ただ、介護従事者は接種がさらに遅れている印象がある。この理由は、3回目がなぜ必要かということが伝わっていないこともあるのではないか。また、2回目の接種で辛い症状を経験したことで前向きになれない職員にも、その意義を丁寧に説明する必要がある。改めて、高齢者だけでなく、医療や介護従事者の接種の前倒しが必要である。

第5波はワクチンの効果もあり、医療機関や施設の職員の感染による診療への影響よりも、一般診療と増大するコロナ診療とのバランスが大きな論点であった。しかし第6波は、諸外国の例をみても職員の感染は十分に想定する必要がある。

つまり第6波は、ブースター接種が遅れた医療機関や施設においては、感染拡大によって働ける職員が減るという応用問題に直面する可能性がある。たとえば、ある部署で職員の5%ないし10%が、本人または同居家族が発症した、小学校や幼稚園が休校・休園になったということで出勤できなくなったらどうするか、といった具体的な想定も必要である。それに対応できるなら、さらに20%働けなくなったら、という想定を考えてもよいであろう。

なお、厚生労働省からは介護施設などを対象にした業務継続についての資料(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/douga_00002.html)が公開されている。

和田耕治(国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)[新型コロナウイルス感染症]

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