No.5138 (2022年10月15日発行) P.65
邉見公雄 (全国公私病院連盟会長)
登録日: 2022-09-30
最終更新日: 2022-09-29
今、病院の給食費(入院時食事療養費)が大変である。食糧生産地ウクライナへのロシア侵略(侵攻とは何を忖度?)で小麦などの需給バランスが崩れ、円安も加わり、食材は記録的な値上がりが続いている。さらに原油や天然ガスなどの値段が高騰し、全国公私病院連盟の調査では、電気代が15〜40%、ガス代は20〜90%アップであった。業者に委託の病院は、契約価格の見直しを要求され、渋々了承したところもあると聞く。
病院給食は乳幼児のアレルギー対策、高齢者の軟飯軟菜や、誤嚥防止のとろみつきキザミ食、消化器手術後は重湯から始まって3分粥、5分粥等々普通食になるまでには手間がかかる。また朝はパンと牛乳の洋食と米飯と味噌汁の和食の選択制。さらに朝食は冷めてはダメ、夕食は6時までなどいろいろな要件。これだけ苦労しても栄養士や調理師の評価は低く、今や一般的なNST加算も私が中医協委員の時に頑張って導入した時以降あまり上がっていない。業者も大手数社が残るのみで、自前に戻る病院も。委託業者は「うまい、安い、早い」の外食チェーンのように少種大量販売は不可能なのでコスパが低く、見直しは喫緊にと。
余談だが、NST加算には泣き笑いのエピソードがある。実質的に初の病院代表の中医協委員に私が就いて、診療所代表委員があまり重視してこなかったチーム医療にNSTと褥瘡防止チームを主張した。そんなある日、知らない方から私のところに「栄養が大切というデータを説明したい」と電話がありお会いした。その方は、風呂敷包みからグラフや写真・図などを取り出し、2時間ぐらい説明。鈴鹿中央病院 東口髙志という名刺を頂いた。私は外科医なので術前・術後の栄養が患者さんの術後経過に大きな影響があることを知っていたが、このデータで厚労省や支払側も説得、認められた。先生は後に藤田保健衛生大学教授となり、その後ずっと戦友に。
しかし敵もさるもの格上であった。食数が実数に。今までは0時前入院でも3食。絶食でも3食だったのだが……。病院に帰って「先生は何しに東京へ行っているんですか? 病院は大損ですよ」と言われたのには参った。
良いお手本が最近ある。歯科材料の緊急見直しだ。入れ歯などに使う金銀パラジウムなどの値上がりで、急遽見直された。支払側は勿論、診療側委員にも慎重論はあったのだが……。給食は医食同源の原点に立ち返り、最速での見直しが必要である。再来年の診療報酬改定までとても待てない。
邉見公雄(全国公私病院連盟会長)[食材費・光熱費の高騰][歯科材料の緊急見直し]