2024年3月8日の「国際女性デー」から、東京・港区北青山のITOCHU SDGs STUDIOにて『Period Museum─生理と社会の交差展─』が開催されています。台湾には常設の「月経博物館」がありますが、日本には生理についての常設の博物館はありません。日本ではこれまで、生理用品などを紹介するフェムテック関連の展示会はありましたが、「生理と社会」をテーマとした博物館形式の展示は初めてだと思われます。
展示は、多角的に「生理」をとらえており、教育的・社会的観点からも意義深い構成となっています。特に印象的なのが、「生理の本音ロッカー」と呼ばれる展示で、生徒の実体験を通じて、学校生活における生理の困難さや、「先生から言われてショックだった言葉」など、リアルな声が共有されています。
さらに、明治〜令和にかけての「生理の歴史」を紹介するセクションでは、時代ごとの制度や社会的な認識の変遷が解説されており、現在の課題を歴史的視点からとらえています。また、「アスリートと生理」のコーナーや、「生理痛文学」など来場者が自らの体験や思いを表現できる参加型の仕組みもあります。
中でも、「生理のウソ・ホント事典」では、巷に広がる生理にまつわる都市伝説を正しく解説しており(僭越ながら、わたしが監修しております)、来場者の医療リテラシー向上に寄与しています。どうしても「こんなに大変!」という大変さの共有までとなりがちなところや、困りごとに対し、「我慢するしか方法がないわけではなく、婦人科を受診することで、保険診療によって症状を大きく改善できる」ことをコーナーを通して伝えています。
生理を「個人の問題」としてとらえるのではなく、「社会全体で共有すべきテーマ」として可視化した本展は、教育現場や職場、家庭など多様な立場の人々にとって、生理についての理解を深める場として非常におすすめです。5月4日まで入場無料で開催されておりますので、ぜひ先生方も足を運んで頂けましたら幸いです。
稲葉可奈子(産婦人科専門医・Inaba Clinic院長)[婦人科][国際女性デー][生理]