社会保障審議会医療部会は9月29日、かかりつけ医機能に関する議論を開始した。政府の「新経済・財政再生計画 改革工程表2021」に沿って、かかりつけ医機能の定義や、かかりつけ医機能を発揮させるための制度整備などについて検討を進め、2023年度末の取りまとめをめざす。
かかりつけ医機能は当初、「第8次医療計画等に関する検討会」の検討課題に位置づけられていた。だが、これまで2回行われた議論では、医療計画の関連事項にとどまらない幅広い意見が示されたことから、厚生労働省は制度改正も視野に丁寧な議論を重ねる必要があると判断。医療部会に審議の場を移すことにした。
医療計画検討会、医療部会を通じて、24時間365日対応が求められる「かかりつけ医機能」を医師が1人で担うのは困難であり、地域の医師・医療機関の連携を前提とした制度設計とするべきだとの点ではおおむね意見の一致をみている。この日の議論では、その実現のためには、患者の診療情報を共有できる情報基盤の整備が不可欠との声が複数の委員から上がった。
木戸道子委員(日本赤十字社医療センター第一産婦人科部長)は、「連携する医師が地域として患者を支えるのが現実的であり、施設が異なっても診療情報を共有できるICTの活用を進める必要がある」と主張。楠岡英雄委員(国立病院機構理事長)も、「予防接種や健診情報、過去の診療情報などを一元化し、誰でも見られるようにすれば、どの医師でもかかりつけ医機能を発揮できるようになる」と、情報基盤の整備が急務との認識を示した。
リカレント教育の必要性を訴える意見もあった。永井良三部会長(自治医科大学学長)は、大病院の外来が混雑する原因は再診患者の多さにあると指摘。状態が落ち着いた患者を地域に返せるよう、「総合診療医が専門的な疾患であっても、数の多い疾患については診られるようにする再教育が必要なのではないか」と述べた。