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【識者の眼】「女性消化器外科医の手術成績は男性と同等」野村幸世

No.5142 (2022年11月12日発行) P.56

野村幸世 (東京大学大学院医学系研究科消化管外科学分野准教授)

登録日: 2022-10-28

最終更新日: 2022-10-28

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本誌8月27日号(No.5131)に、日本消化器外科学会のNational Clinical Database(NCD)(95%以上の日本の外科手術が登録されているデータベース)を用いた研究として、外科医の年齢、性別ごとの執刀数に関して、JAMA Surgeryに発表させて頂いた(Surgical Experience Disparity Between Male and Female Surgeons in Japan. JAMA Surg. 2022;157(9):e222938. doi:10.1001/jamasurg.2022.2938)ことを記載した。

この研究の結果では、あらゆる経験年齢層において、女性外科医の執刀数は男性外科医よりも少なく、しかも、この差は、術式の難易度が上がるに従って顕著である、というものであり、手術研修、活躍の機会としての男女平等を訴えた。

この研究の姉妹論文として、同じデータベースを用いて、日本の男女消化器外科医の術後合併症の多寡を比較した論文を、先日、British Medical Journal(BMJ)に発表した(Comparison of short term surgical outcomes of male and female gastrointestinal surgeons in Japan:retrospective cohort study. BMJ. 2022 Sep 28;378:e070568. doi:10.1136/bmj-2022-070568)。

結果としては、男女消化器外科医の術後死亡を含めた術後合併症率は同等である、というものであった。北米での研究では女性医師や女性外科医の治療成績は男性と同等かそれ以上であった、と報告されており、日本というジェンダーギャップが大きい国でもこれが証明されたことになる。

この研究では主な結果以外に、患者さんの全身状態などの評価もした。統計学的に有意に女性外科医のほうが、全身状態の悪い(高齢、主要臓器の機能障害あり、貧血あり、など)患者さんの執刀を担当しており、この点は欧米での同様の研究とは異なる結果であり、欧米の研究者を驚かせた。

先日のJAMA Surgでの論文で示すごとく、女性外科医の手術執刀経験数は男性外科医よりも少ない傾向にある、という条件が背景に加わった上での今回の結果である。

もしも、女性外科医の腕が男性外科医に比較して劣っていれば、女性外科医に手術を多く執刀させない、という理由の正当化をサポートしかねないが、今回の結果からは、そのような正当化はまったくできないこととなったと理解している。多くの部長、科長、院長の先生方には活躍の男女差がないよう考えて頂きたいものである。

野村幸世(東京大学大学院医学系研究科消化管外科学分野准教授)[ジェンダーギャップ

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