政府の全世代型社会保障構築会議は12月16日、報告書をまとめ、岸田文雄首相に提出した。後期高齢者医療制度における高齢者負担率の見直しや、かかりつけ医機能報告制度の創設を盛り込むなど、厚生労働省の関係審議会における検討結果を反映させた内容となった。
医療保険制度の改革では、増加する高齢者医療費をすべての世代が負担能力に応じて公平に支え合う仕組みを構築する観点から、後期高齢者の保険料負担と現役世代の支援金負担の1人当たり伸び率が均衡するように見直すことを提言。高齢者世代内で能力に応じた負担が強化されるよう、後期高齢者保険料の賦課限度額と所得割率の引き上げも求めた。
被用者保険は保険者間の保険料率格差是正のため、前期高齢者の医療費の分担について、現行の「(前期高齢者の)加入者数に応じた調整」に加え、「報酬水準に応じた調整」(報酬調整)の部分的な導入を提言した。
医療提供体制の改革では、▶地域医療構想の推進、▶医療法人の経営情報のデータベース構築などの医療法人改革、▶医師等の働き方改革の推進、▶医療専門職におけるタスク・シェア/シフトの推進、▶医師偏在対策―などの着実な実施を促した。
かかりつけ医機能が発揮される制度整備では、患者がかかりつけ医機能を担う医療機関を選択できる方式の実現を目指し、▶医療機能情報提供制度を拡充、▶医療機関が自院のかかりつけ医機能を報告する制度を創設、▶医療機関が継続的な管理が必要と判断される患者に対して、かかりつけ医機能として提供する医療の内容を書面交付などによって説明する仕組みの導入、▶地域のかかりつけ医機能に対する改善点を協議する仕組みの導入―などを求めた。
介護では、「第9期介護保険事業(支援)計画」(2024〜26年度)に向けた改革として、▶介護ロボット・ICT機器の導入支援、▶介護サービス事業者の経営の見える化、▶生産性向上に向けた処遇改善加算の見直し、▶職員配置基準の柔軟化の検討―などを提言。さらに制度の持続可能性を確保するためには、サービス提供体制や給付と負担の見直しが「喫緊の課題」だとしたが、その対応については「来年度の『骨太の方針』に向けて検討を進めるべき」との記載にとどめ、具体策には言及しなかった。