司法面接とは、虐待や事件の被害にあった子どもや障がい者などの弱者から話を聞く際に用いられる面接技法です。
子どもが虐待の被害にあったとします。以前は、まず児童相談所で被害の確認をする面接を受け、さらに刑事事件に発展する際には、警察でも警察官から聴取を受けます。そして、検察でも被害についての話を求められます。このように、繰り返し面接を受けることで、嫌な体験を何度も想い出してしまいます。すると、事件の再体験、思考の回避、過覚醒といった心理的な症状が出現することや、緊張状態(血圧や心拍の上昇)や過呼吸などの身体症状が出現することがあります。
したがって、被害にあった弱者の負担を最小限にすべき、という課題がありました。また、面接が繰り返されると必然的に時間が経過しますので、記憶はあいまいになっていきます。面接方法によっては、「ママにたたかれたのかな?」などの質問に誘導されたり、暗示が生じる場合があります。
これらのことから、法的な判断にも資するべく、正確な情報を弱者から聴き取る、という課題がありました。
以上の課題をふまえ、2015年に厚生労働省、警察庁、最高検察庁は、複数の機関が連携した聴取を推奨する通知を出し、司法面接が導入されました。虐待や事件が発生してからなるべく早期に、代表者が被害者と対面して話を聞きます。他の関係者は別室でモニターをみていますが、その様子は録音・録画されます。被害者にはなるべく負担がかからないよう配慮されます。また、誘導や暗示がないようにして正確な情報を得ます。
面接者は、まず、世間話をするなどして被害者と信頼関係を築きます。そして、最近のことを想い出す訓練をし、その後に被害についての話に移ります。面接では開放型の質問(自由に答えられる質問)を用いて、自発的な報告を得ます。被害者が話しはじめた後も、「それからどうなりました」「そのことをもっと詳しく話して下さい」など、応答に制約をかけない質問をしていきます。
司法面接が実施される機会は増えており、現在、年間に2000件以上実施されています。司法面接には、私たちが日常の診療で行っている医療面接と類似する点がいくつかあります。まずは、信頼関係を築いてから面接を進める点です。
医療面接においてもラポールの形成が大原則です。
次に、被害にあった人の心理的負担をできるだけ軽減することです。性犯罪被害者の診察においても、警察官などから情報を得ていれば、繰り返して本人に確認することは避けます。さらに、本人が話しやすいような静かな場所を用意することも重要です。そして、開放型の質問から始めるということです。
患者の訴えを聞く際にも、開放型の質問から開始し、徐々に焦点を絞った質問に移行していきます。
患者から正確な情報を得るという点では、目的は同じです。私たちが行っている医療面接は、患者に配慮され、かつ質の高い医療につながる重要な手段なのです。