社会保障・人口問題研究所は8月4日、2021年度社会保障費用統計の概要を発表した。21年度の社会保障給付費(ILO基準)は138兆7433億円で、対前年度比6兆5283億円(4.9%)増となり、過去最高を記録した。
21年度の伸び率4.9%は、近年では前年の20年度の6.7%増に次ぐ高い水準。新型コロナウイルス感染症に対する関連支出が膨らんだのが原因となっている。
社会保障給付費を部門別にみると、「年金」が55兆8151億円(総額に占める割合は40.2%)、「医療」が47兆4205億円(34.2%)、「福祉その他」が35兆5076億円(25.6%)。
対前年度増加額と伸び率は「年金」が1816億円(0.3%)増、「医療」が4兆7013億円(11.0%)増、「福祉その他」が1兆6455億円(4.9%)増だった。
「医療」は近年1~2%程度の伸び率だったが(17年度1.6%増、18年度0.8%増、19年度2.5%増)、新型コロナがパンデミックとなった20年度は4.9%増を記録。21年度はさらに11.0%増の大幅な伸びとなった。社人研では、新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金(医療分)の2兆8998億円やワクチン接種の関連費用があったほか、医療給付費も伸びたことが原因と分析している。
ワクチン接種の主な事業をみると、①新型コロナウイルスワクチン接種体制確保事業費臨時補助金:7342億円、②ワクチン購入・流通費用(21年度接種済み相当分):6924億円、③新型コロナウイルスワクチン接種対策費負担金:6558億円、④新型コロナウイルスワクチン接種体制確保事業:433億円―で合計2兆1257億円(20年度は359億円)となっている。
「福祉その他」も近年は2~5%程度の伸びだったのが、20年度は22.0%増と急騰した。21年度は4.9%増と揺り戻した格好だが、新型コロナに伴う生活支援として実施された子育て世帯等臨時特別支援事業費補助金(高校3年生までの児童を対象に1人当たり10万円相当を給付、2兆9106億円)、雇用調整助成金(2兆1759億円)などが含まれている。
一方、「年金」はほとんど横ばいだった。