夏も終わりますね。皆さんは、今年の夏は花火を見られましたか。
さて今回は、No.5182で示した情報提供義務にかかわる問題を、マイナンバー制度を活用して解決する方法について、「権利の自動化」という視点から大胆に想像してみたいと思います。あくまで架空の話ですので、その点をご了承頂ければ幸いです。
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【ケース1:No.5160の事案をモデルにして】
Aさんの子どもであるB君が不調を訴え、病院で診察を受けた結果、小児がんであると診断されました。B君のカルテは、マイナンバーのシステムによりAさんの住む自治体に共有され、特別児童扶養手当の受給資格を満たすことが確認されました。
Aさんは、B君の治療費や、看病で仕事を休む際の経済的な問題で不安になっていました。そのとき、スマートフォンにマイナポータルから通知が来ました。画面を見ると、「Aさんのお子様(Bさん)の病状が受給資格を満たすため、来月より特別児童扶養手当(月額〇〇万円)をAさんの公金受取口座に支給します」とのメッセージがあります。Aさんは少し安心して、B君の看病の計画を立てることができました。
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【ケース2:No.5164の事案をモデルにして】
要介護認定を受けたGさんは、医療法人Lの運営する介護老人保健施設(老健)Mに入所したいと考えました。老健Mのケアマネジャーから説明を受け、Gさんは、医療法人Lと入所に関する契約を結ぼうとしています。契約にあたり、ケアマネジャーがタブレット端末でGさんのマイナンバーカードを読み取ります。そのデータは、介護保険の保険者(自治体)に即時に送付され、共有されます。
すぐにマイナンバーのシステムにより、Gさんの所得と課税状況に関するデータが照会され、Gさんは補足給付の対象者に該当することが判明しました。保険者から、ケアマネジャーのタブレット端末に、その旨の通知が来ます。ケアマネジャーはその場でGさんに、「食費と居住費が割引きされて、1カ月あたり○○円になりますよ」と伝えることができました。
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いかがでしょうか。これが、私の考える「権利の自動化」です。「とても便利だ!」と感じる方もいれば、「とても怖い……」と感じる方もいるでしょうか。
次回は、この点を、法的な観点から少し掘り下げてみたいと思います。
山下慎一(福岡大学法学部教授)[社会保障][マイナンバー][申請主義を超えて][権利の自動化][情報提供義務]