アカシジアは静座不能症とも訳され,落ちつかない,じっとしていられないという⾃覚症状と,それに伴う過剰な動作が特徴である。通常は抗精神病薬などドパミン受容体遮断作⽤のある薬剤の副作⽤として生じる。稀に脳炎や両側側頭葉の外傷などで⾮薬剤性アカシジアが起こる。患者にとっては非常に苦痛で,衝動的な自殺に至ることもあり,早急な対応が必要である。
落ちつかなさ,下肢のむずむず感・灼熱感などを訴え,「そわそわ歩き回る」「じっと座っていられず,頻繁に姿勢を変えたり下肢を動かしたりする」「じっと⽴っていられず,無意味に⾜踏みをしたり体を左右に揺らしたりする」などの動作・行動が観察される。
原因薬剤の開始・増量後,3日~2週間以内に発症する急性アカシジアが多く,3カ⽉以上経って発症する遅発性アカシジアもある。ドパミン受容体遮断作⽤のない薬剤でアカシジアを生じた報告もある。また,依存物質からの離脱症状として出現することがある。
精神症状の増悪による不安・焦燥と鑑別が難しいことがある。アカシジアでは診察室でもじっとしていられないことが多い。また,アカシジアでは動作によって苦痛が軽減されるのに対し,精神症状の場合はあまり軽減されない。
レストレスレッグス症候群は,就寝時の眠気が訪れる時間帯に下肢の異常感覚を生じ,下肢を動かすとそれが消えるために動かさざるをえなくなる。アカシジアとよく似た症状であるが,アカシジアは眠気と関係なく,日中でもじっとしていられない。
遅発性ジスキネジアは口をもぐもぐさせる,舌を突き出す,身体を前後に揺らすなどの不随意運動であり,患者はあまり苦痛を訴えない。一方,アカシジアは苦痛軽減のために動く随意運動である。しかし,遅発性アカシジアには遅発性ジスキネジアを伴っていることが多く,ジスキネジアをみたときはアカシジアがないか,注意を要する。
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