厚生労働省は9月25日、エーザイが申請していたアルツハイマー病(AD)治療薬レカネマブ(商品名:レケンビ点滴静注200mg、同点滴静注500mg)を正式に承認した。これを受け中医協は、年内の薬価収載を目指して薬価設定の議論を27日から開始した。
レカネマブは、アミロイドβの脳内異常蓄積がADの原因の1つと考える「アミロイドβ仮説」に沿って、エーザイが米バイオジェンと共同開発した抗体医薬品。神経毒性の高いアミロイドβプロトフィブリルに選択的に結合して脳内から除去することでADの進行を抑制し、認知機能と日常生活機能の低下を遅らせることが期待されている。レカネマブの承認は、今年7月にフル承認した米国に続いて2カ国目となる。
日本で承認された効能・効果は「アルツハイマー病による軽度認知障害および軽度の認知症の進行抑制」。添付文書に加えて、薬価収載までに最適使用推進ガイドラインが作成され、患者要件(アミロイドβ病理を示唆する所見の確認など)や医師・施設要件(診断やアミロイド関連画像異常(ARIA)の画像所見の判断等ができる医師など)が定められる予定となっている。
承認を受け、エーザイの内藤晴夫CEOは「AD治療の歴史に新たなページを開くことができた。病気の原因を取り除く新たな治療として、必要とする早期AD当事者とその家族にレケンビを適確に届けることに全力を尽くしていく」とのコメントを発表した。
レカネマブの米国での販売価格は年間2万6500ドル(9月のレートで約366万円)。日本での年間の市場規模も1500億円を超える可能性があることから、厚労省は通常の薬価算定の手続きに先立って、中医協に薬価算定方法の議論を求めることを決めた。
27日の中医協では、薬事承認から90日以内に薬価収載が行えるよう、介護費用の負担軽減効果なども踏まえて議論を進めることなどが確認された。
一方、岸田文雄首相は27日、首相官邸で「認知症と向き合う『幸齢社会』実現会議」を開催。「レカネマブは画期的な新薬であり、認知症の治療は新たな時代を迎えた」として、新薬へのアクセスや投与後のモニタリングが適切に確保されるために必要な検査体制・医療提供体制の整備の検討などを武見敬三厚労相に指示した。
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