有害性が指摘される高濃度の有機フッ素化合物のPFAS(ピーファス)が、全国各地の地下水などで検出されている。人体にどのような影響があり、どのような対策が必要なのか。20年前からこの問題に取り組んできた京都大学大学院医学研究科環境衛生学分野の原田浩二准教授に聞いた。
有機フッ素化合物のうち、炭素と複数のフッ素が結合した物質の総称です。熱や光に強く、水や油をはじく性質があるので、たとえば、レインコートやスキーウェアなどの撥水コーティング、燃料火災用の泡消火剤、半導体の製造過程などに使われてきました。
PFASの問題が最初に表面化したのは2000年でした。米国の3M(スリーエム)社が、数多くのPFASのうちPFOS(ピーフォス)とPFOA(ピーフォア)の製造を02年までに止めると発表したのです。PFOSとPFOAは特に自然界で分解されにくく、将来的に健康リスクが生じる恐れが否定できないというのが理由でした。
これを機に世界中で研究が広がり、日本でも、京都大学の小泉昭夫名誉教授を中心にPFASによる汚染状況調査が02年から始まりました。私は大学院生としてこの調査に参加し、秋田県から沖縄県まで全国10カ所の住民の血液中のPFOSとPFOAの濃度を測定しました。その結果、全国に汚染が広がっていることがわかったのですが、特に、関西圏でPF OAの血中濃度が高いことが問題視されました。
ただ、その後企業の自主的な取り組みもあってPFOSとPFOAの製造と使用は減ったので、この問題も収束が期待されました。