医療経済実態調査の結果が11月24日に報告されたことを受け、中央社会保険医療協議会では12月1日、各側から見解が示された。支払側は「医療機関等の経営は総じて堅調だ」と述べ、診療報酬の引き上げを求める診療側を牽制。これに対して診療側は、「医業経営はコロナ禍前よりも悪化している」と訴え、物価高騰や医療従事者の賃上げのための財政的手当を改めて求めた。
同日は薬価調査等の速報値も報告。改定の判断材料が出揃ったことから、次回以降、診療報酬改定に関する各側の意見が提出されることになった。
各側の見解は、コロナに関する診療報酬の特例や補助金の影響を、次期改定の論議で考慮するか否かでも食い違いをみせた。支払側は、「減収を補塡するという補助金の役割を考慮すれば、医業・介護収益に含めたデータでの議論が妥当だ」と主張。これに対して診療側は「影響は除くべきだ」と反論、その理由として、①コロナに関する診療報酬の特例や補助金は一過性の収益であり、コロナ対応の診療体制の整備に活用されている、②すべての医療機関が特例、補助金の対象になっているわけではない―などを挙げた。
実調の結果について支払側代表の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は、コロナ補助金を含める形で独自に再分析し、①22年度の損益差額率は一般病院、一般診療所とも黒字になっている、②一般病院、一般診療所の純資産比率や流動比率は21年度から22年度にかけて上昇した―などと指摘。「経営という観点では、総じて堅調であることが窺える。特に純資産比率、流動比率をみると経営的には余裕度が上がっていると受け止めるべきではないか」と述べた。
診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は、コロナ特例と補助金を除いた医療機関の損益率を、コロナ前後の平均値で比較した結果、一般病院、診療所ともコロナ後がコロナ前を下回ったことを明らかにした。費用面では、物価高騰の影響や人材確保の困難さを反映し、水道光熱費や紹介手数料が大幅に増加したことを強調。「診療報酬という公定価格で運営する医療機関等が賃上げ、人材確保を継続的・安定的に行い、物価高騰にも対応するには十分な原資が必要であり、そのためには24年度改定が担う役割は非常に重要だ」と述べた。