進行性の認知機能障害を呈し,わが国では認知症の約60%を占めると言われている。病理学的にはアミロイドβ(Aβ)からなる老人斑,リン酸化タウからなる神経原線維変化,神経細胞死が特徴的である。
初期からみられる認知機能障害の中核症状は記憶障害であり,エピソード記憶を中心とした近時記憶の障害が特徴的である。進行すると時間や場所の見当識障害,遂行機能障害,失語,視空間機能障害など他の認知機能も低下し,日常生活に支障をきたすようになる。
周辺症状と言われる行動・心理症状については,初期から認められやすいのは物取られ妄想であり,その他の妄想,興奮,徘徊,暴言暴力などが中期以降にみられることが多くなる。
緩徐に進行する認知機能障害の存在を,問診や神経心理学的検査などの情報から確認していくことが基本である。また,患者に病識の欠如を伴っている場合もあり,家族からの情報も参考になることが多い。
頭部CTやMRI検査では内側側頭葉の萎縮が特徴的で,脳血流SPECTでは後部帯状回や頭頂・側頭葉の血流低下が認められる。アミロイドPETでは早期の段階からアミロイド蓄積が認められる。脳脊髄液検査でAβ42/Aβ40比の低下,総タウあるいはリン酸化タウの上昇は,診断として有用である。
認知機能障害や行動・心理症状に対してコリンエステラーゼ阻害薬,グルタミン酸受容体拮抗薬を,症状の重症度と剤形や副作用などの状況を考慮して,選択する。
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