2024年4月からの医師の時間外・休日労働への上限規制導入で、全国約7000医療機関のうち49医療機関において、大学等からの派遣医師引き揚げによる診療体制縮小が見込まれることが、厚生労働省の「医師の働き方改革の施行に向けた準備状況調査」で明らかになった。一方、24年4月時点で時間外労働時間数等が年1860時間超の見込み医師数は1人にまで減少。医療機関の労働時間短縮の取り組みが進んでいることがうかがえた。調査結果は3月14日の「医師の働き方改革の推進に関する検討会」に報告された。
厚労省は23年10月末から11月末にかけて、大学病院本院を除くすべての病院と、分娩を取り扱う産科の有床診療所を対象に調査を実施。その後、24年1月および3月に調査対象施設へのフォローアップを行い、データを更新した。
それによると、回答した7326施設のうち、24年4月の医師の働き方改革施行後に診療体制縮小の「見込みあり」と回答したのは457施設、「見込みなし」は6869施設。さらに縮小見込みの457施設に地域の医療提供体制への影響を聞いたところ、「影響あり」(132施設)との回答が「影響なし」(77施設)を大きく上回った。248施設は「不明」と回答した。
大学病院等からの派遣医師の引き揚げによる診療体制の縮小が見込まれる施設は49あり、その約4割にあたる21施設が、地域の医療提供体制にも「影響がある」と回答した。
これに対して、宿日直許可の取得や労働時間短縮の取り組みを行っても24年4月時点で副業・兼業先を含む時間外労働等が年1860時間相当を超える見込みの医師数は、病院が1人、産科有床診療所が0人だった(この質問のみ回答施設数7918)。
調査結果を踏まえて厚労省は、都道府県や医療勤務環境改善支援センターに、①医療計画、救急医療、小児周産期医療等の担当部門と連携して、医療提供体制を維持するための地域における議論や都道府県による調整等の実施、②派遣医師の引き揚げ予定があると回答した医療機関については、必要に応じて派遣元病院や地域の状況を確認し、都道府県としての評価や対応を実施、③時間外労働等が年1860時間超の医師がいる医療機関については状況を確認し、解消に向けた具体的な対応を実施―などを要請したことを明らかにした。