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トキソプラズマ症[私の治療]

No.5226 (2024年06月22日発行) P.49

保科斉生 (東京慈恵会医科大学医学部感染制御科講師)

登録日: 2024-06-22

最終更新日: 2024-06-18

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  • トキソプラズマ症はToxoplasma gondiiによる人獣共通の原虫感染症である。食肉や環境から経口感染するため,誰しも感染の可能性があるが,その多くは無症候感染である。ただし,妊婦が感染することによって引き起こされる先天性トキソプラズマ症や,免疫不全者に生じる脳炎や播種性感染は抗寄生虫薬による治療が必要である。

    ▶診断のポイント

    免疫不全者におけるトキソプラズマ症は慢性感染の再活性化が主な原因であり,抗トキソプラズマIgG抗体は慢性感染と感染の再燃を区別することができない。また,抗トキソプラズマIgM抗体は1~3年にわたり陽性になる場合があり,急性感染や先天性トキソプラズマ症の診断時には注意が必要である1)。もし適切な組織が採取できれば病理検査が確定診断につながる症例もあるが,必要に応じて保険未収載であるPCR法や抗トキソプラズマIgG抗体アビディティテストを追加し総合的に診断する。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    トキソプラズマ症には主に4つの病態があり,①急性感染,②慢性感染,③先天性感染,④免疫不全者における感染の再燃,にわけることができる。①②に抗寄生虫薬は原則不要である。③④では後遺症や死亡のリスクがあるため,原則治療介入が必要である。多くの病態の第一選択薬であるダラプリム25mg錠(ピリメタミン)とスルファジアジン500mg錠(スルファジアジン)は国内未承認の薬剤であり,薬剤を管理している研究班に連絡が必要である。

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