介護人材不足が深刻な状況にあるわが国では、国の2021年度の「成長戦略フォローアップ」において、介護の質、生産性の向上、現場の働き方改革につながるよう、「地域医療介護総合確保基金を活用し、『介護助手』などの多様な人材の活用や兼業・副業等の多様な働き方の実践を支援するなど、介護人材確保に総合的に取り組む」とされている。介護助手は、全国老人保健施設協会の東憲太郎会長が発案し、2015年に三重県内の介護老人保健施設で「元気高齢者による介護助手モデル事業」として開始された。
筆者が参画した2020年度厚生労働省老人保健健康増進等事業「介護老人保健施設等における業務改善に関する調査研究事業」では、全国の介護老人保健施設に介護助手の雇用に関する実態調査を行った。本調査における介護助手の定義は、(1)介護施設・事業所もしくは介護施設・事業所を運営する法人と雇用関係にある(有償ボランティアや委託業者の職員は除く) 、(2)掃除や食事の配膳・片づけ、ベッドメイキング、利用者の会話の相手、移動の付き添い、レクリエーションの実施や補助、送迎、在庫管理、修理修繕等、専門的な業務(身体介護等)以外の業務を主に行う─ものとした。なお、施設・事業所によっては、介護助手を「介護サポーター」「ケアサポーター」「介護補助職員」「シニアスタッフ」などと呼称する場合も多い。本調査の結果、全国の約6割の介護老人保健施設で介護助手等を雇用していることがわかった。そのうち約8割が60歳以上の高年齢介護助手であった。
さらに、2022年度老人保健健康増進等事業において、介護老人保健施設に加えて介護老人福祉施設や介護付き有料老人ホーム、認知症対応型グループホームも含めた介護サービス事業所についても、雇用状況を調べた結果、「現在、導入(雇用)している」が51.1%、「現在は導入(雇用)していないが、過去、導入(雇用)していた」が7.0%、「一度も導入(雇用)したことがない」が41.9%であった。
介護助手を「現在、導入(雇用)している」施設では、平均4.6人の介護助手を導入していた。介護現場における介護助手の活用は、生産性の向上やケアの質の向上等が期待されるものである。こうした施設側の効果に加えて、介護助手本人への効果について、次号で述べることとする。
藤原佳典(東京都健康長寿医療センター研究所副所長)[高齢者就労][健康]