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【識者の眼】「創設時に立ち返って医療事故調査制度を考える」小田原良治

No.5232 (2024年08月03日発行) P.64

小田原良治 (日本医療法人協会常務理事・医療安全部会長、医療法人尚愛会理事長)

登録日: 2024-07-11

最終更新日: 2024-07-11

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本年6月29日、鹿児島市において、松本晴樹厚生労働省医政局医療安全推進・医務指導室長、井上清成弁護士と私の3名で鼎談を行った。以下が共通認識である。

①医療事故調査制度の目的は、過失に対する責任追及ではなく、医療安全の向上である。医療事故調査の結果として過失が明らかとなり、遺族への謝罪・補償・社会への説明等が必要となる場合があるが、それは医療事故調査制度で規定されているプロセスとは別である。

②「医療事故の疑い」が「医療事故」となるのではなく、提供した医療に起因すると疑われる死亡又は死産であって、管理者が予期しなかったものが「医療事故」に該当する。

③医療事故の判断に際しては、予期の有無と医療起因性の有無という2つの観点があり、「予期しなかった死亡」かつ「医療起因性のある死亡」が「医療事故の定義」であると厚労省は明示している。

④2016年当時、塩崎恭久厚生労働相が、「医療事故調査制度における医療事故の定義は、『医療に起因する死亡』および『予期しなかった死亡』の両者を満たす場合であるため、(当初件数を予想したときよりも)対象が狭くなっている」と説明した。

⑤「過誤の有無は問わない」とは、「医療過誤」かどうかと「医療事故」かどうかは、個々別々に決められることであり、医療事故であっても医療過誤ではないケースがあるのと同様、医療過誤であってもそれとは関係のない併発症や原病の進行により死亡した場合など、医療事故の定義には該当しないケースもありうる。適切に理解して運用してほしい。

⑥医療事故の定義で使用されているのは『予期』であり『予見』とは異なる。

⑦医療事故の当事者となった医療従事者へのピアサポートを充実させていく必要がある。

⑧医療従事者のウェルビーイングは大切である。

⑨医療事故調査制度は秘匿性を重視した仕組みになっている。なお、医療事故調査制度における医療事故の発生や院内医療事故調査の結果公表について、法令上の制限はないが、公表を義務だととらえる人がいるのであれば、それは誤解なので、正しく制度を理解してほしい。

小田原良治(日本医療法人協会常務理事・医療安全部会長、医療法人尚愛会理事長)[医療事故][医療過誤][調査報告書]

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