厚生労働省は9月3日、「令和5年度(2023年度)医療費の動向」を公表した。それによると23年度の概算医療費は過去最高の47.3兆円となり、前年度と比べると金額では約1.3兆円、伸び率では2.9%の増加となったことがわかった。新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行した影響で、新型コロナ関連の医科医療費は4400億円程度と前年度の8600億円程度からほぼ半減。それに伴い概算医療費の伸び率も前年度の4.0%から大幅に縮小した。
23年度の概算医療費の内訳をみると、延患者数に相当する受診延日数は前年度比2.0%増加、1日当たり医療費は0.8%増加した。新型コロナの影響が少ない19年度から23年度までの平均伸び率は2.1%となり、その内訳では受診延日数が0.4%減少したのに対して1日当たり医療費は2.5%増えていた。
診療種類別の伸び率は、入院3.1%増、入院外1.0%増、歯科1.9%増、調剤5.4%増。受診延日数も、入院2.3%増、入院外1.9%増、歯科0.7%増、調剤6.0%増―とすべての診療種類で増加した。1日当たり医療費は入院外(0.8%減)と調剤(0.5%減)が前年度から減少した一方で、入院(0.8%増)と歯科(1.2%増)は増加した。
年齢階層別の1人当たり医療費の伸び率は、75歳以上0.9%増、75歳未満(未就学者除く)2.7%増、未就学者6.7%増―となった。未就学者での大幅な増加は、1日当たり医療費が4.8%減少したにもかかわらず、1人当たり受診延日数が12.1%と大きく伸長したことが要因。これに対して75歳以上は、1人当たり受診延日数の減少(0.5%減)を上回る1日当たり医療費の伸び(1.4%増)が医療費の増加につながった。
入院外医療費について、医科診療所の主たる診療科別の医療費の伸び率をみると、耳鼻咽喉科(7.4%増)が最も高く、次いで産婦人科(4.0%増)、眼科(3.2%増)、皮膚科(2.9%増)など。小児科は受診延日数の伸び率が16.3%増と突出して高いが、1日当たり医療費の減少幅も15.1%と大きかったため、結果として入院外医療費は1.2%の減少となった。