本当にあったのだろうか? と首を傾げてしまう速さで10月が終わろうとしています。スウェーデンでは、明るい陽射しの中、人々が日光浴をしていた夏はとうに終わり、紅葉輝く秋が来たと思ったら、それももうすぐ終わりそうです。今週からはダウンコートを出しました。10月初旬にはストックホルム市内でも肉眼でオーロラがみられるといった予報(スウェーデン中のオーロラを予報するアプリ)や、彗星がみられるといった予報があり、夜中に家族で近くの広場までパジャマの上にコートを羽織って出かける日もしばしば。ただ、いつも、そんな時間に子どもづれで広場にいるのはわが家だけなので、オーロラや彗星に日常を乱されてしまう内は、まだまだスウェーデン生活の初心者ということかもしれないと思ったりします。目前の冬に向け、心と環境を整えて、家籠りの準備をする季節です。
そんなわけで、あっという間に時が経ち、夏の出来事を忘れてしまいそうなので、ここに書き記しておこうと思います。この夏一番のイベントは、なんといってもウプサラ城で開催されたザリガニパーティーでした。ザリガニはスウェーデンの夏の風物詩です。スウェーデン国内でザリガニ漁が解禁となる8〜9月にかけて、家族や友人を招いたザリガニパーティーが各所で催されます。パーティーといっても、茹でたザリガニを素手で持ってほじくって食べるので優雅にはなりづらいのですが、それが楽しさの秘訣でもあるかもしれません。
9月には、そんなザリガニをウプサラ城で頂けるという貴重な機会に恵まれました。私の目の前にはオレブロ大学医学部部長のMia von Euler先生が座っており、性差医学へのご関心についてお聞きすることができました。Euler先生のご専門は神経医学。先生の研究室では、特に脳卒中の発症や予後にみられる性差に関わる研究を多く発表され、台湾や韓国でも関連する内容で講義を受け持たれてきたとのこと。日本でも性差医療への関心が高まっていますとお伝えしました。『ジェンダード・イノベーションの可能性』という共著が出たことも、近々お伝えするつもりです。
夏にザリガニを囲んで楽しい時間をつくるのは、出不精になりがちな冬に人と会う口実を見つけておくためかもしれません。Euler先生の優雅なザリガニの食べ方と楽しく歌うお顔を、紅葉の中で思い出しています。
渡部麻衣子(自治医科大学医学部総合教育部門倫理学教室講師)[性差医療][風物詩][ザリガニ漁]