11月22日、米国メジャーリーグ(MLB)、ナショナル・リーグのドジャースに所属する大谷翔平選手が2024年度ナショナル・リーグのMVPに決まりました。指名打者としては初のMVPということですが、そもそも右肘靱帯再建手術からのリハビリ中で、打者のみでの出場というシーズンでした。
しかし、出塁率の高い大谷翔平選手には盗塁の機会も多く、俊足と投手の動作を読んで見事に盗塁も量産し、盗塁しようのない本塁打と合わせたMLB初の50-50も成し遂げたことは驚異的な活躍でした。
一方で、右肘の靱帯再建は2度目、さらにワールドシリーズで盗塁の際にスライディングで左手を着いた際の左肩脱臼(亜脱臼という記載も)で、祝勝会や優勝パレード後の手術と様々な試練にも立ち向かうことになっています。不幸中の幸いは、右投げ投手として左肩の損傷だったことで、再脱臼を防ぐ関節唇修復などの手術で多少動きが硬くなっても投球への影響はほとんどないと思われます。
また、打者としては左打ちなので、投球時ほどの肩の外旋や外転は要しないだろうと推測しています。何より、次のシーズンを意識した迅速な決断にプロ意識を感じました。とは言え、鍛え上げた身体を支える関節構造(骨格や靱帯)は鍛えられるものではなく、周囲の筋力での制動を高めるしかありません。身体を大きくしても、関節構造は変わらないことを意識した肉体改造が必須です。
私たちの骨格は成長期の終了でそれぞれの骨の長さの増大は終了し、骨の幅の増大は長さの増大よりも早く終了すると考えられています。四肢骨格の大部分は中学生〜高校生の前半の時期に長さの増大が終了し、幅はそれより早い点を考えると、肘や膝の骨格幅は15歳頃までに多くの人で増大が終了すると考えられます。その後、筋量が増え体重が増加する場合、肘や膝で体重を支える相対的な負担は大きくなります。また、投球速度の増加も肘での外反負荷を高めることがわかっており、肘の骨格幅が完成後は靱帯への負担を大きくすることになると思います。
スポーツ選手たちは成長完了後も、様々なトレーニングや栄養摂取で筋量を高めて身体を大きくすることが通常ですが、骨格とのアンバランスが大きくなりすぎないような限界があるのかもしれません。
鳥居 俊(早稲田大学スポーツ科学学術院教授)[野球][関節の損傷][骨格]