診療科: | リハビリテーション科 | リハビリテーション科 |
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整形外科 | スポーツ医学 |
スポーツ安全協会の要覧(2020-21年度)によれば,股関節は「下肢(その他)」に分類され,傷害部位別の事故発生割合は2.1%と報告されています。この数字に表れているように,股関節におけるスポーツ損傷は,言わばマイナー損傷とされ,これまでのスポーツ医学の教科書においても,その扱いは非常に小さいものであったように感じます。ましてや,そのリハビリテーションに特化して書かれた書籍はこれまでなく,リハビリテーションスタッフの皆さんは,それぞれ独自の工夫をしながら患者さんに向き合ってこられたことと思います。
本書は,姉妹書である『整形外科医のための 股関節のスポーツ診療のすべて』から,リハビリテーションスタッフに直接関係のある箇所のみを厳選して構成しています。「そもそも股関節とは?」ということを十分に解説した「総論」部分と,疾患別に具体的なメニューを豊富な図表を用いて解説した「各論」部分に分け,極めてコンパクトに,かつ実践的な内容のみ記載しています。
今回,執筆をお願いしたのは,スポーツ診療の現場のみならず,アカデミックな活動をフロントラインで行っている先生方です。先にシリーズ書として出版された『膝のスポーツリハビリテーション』の序文で,編者の大内 洋先生も強調されていますが,本書の大きな特徴として,全編にわたり,リハビリテーションスタッフと普段からコミュニケーションを密にしている整形外科医が中心となって執筆していることが挙げられます。つまり本書の内容は,各領域のスペシャリストの医師から要求されている知識と治療内容であり,それらが医師とリハビリテーションスタッフの「共通言語」で記載されています。
リハビリテーションの現場のすべてで,医師とリハビリテーションスタッフのコミュニケーションが密にとれる訳ではありませんし,特に股関節に関しては,膝や肩の専門医と比べ,スポーツ診療を専門にしている医師が少ないのが現状です。
前述したように,特に「各論」は,目の前の患者さんにすぐ使える情報のみ抽出して記載されていますので,ぜひ臨床の現場で本書を活用して頂き,股関節痛に苦しむスポーツ選手や患者さんに還元して頂ければと思います。さらに,リハビリテーションスタッフの皆さんは,その成果や治療中に得られた発見を,我々医師にフィードバックして下さい。それが必ず,患者さんの将来の利益になるはずです。理学療法士やアスレティックトレーナー,将来スポーツリハビリテーションに関わりたいと思っている学生さんなど,多くの読者に本書が届くことを願っています。