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<スポーツ障害>筋損傷のエコー活用術

筋の構造,正常超音波像,損傷部超音波評価法を理解してスムーズな復帰につなげる

定価:11,000円
(本体10,000円+税)

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監修: 熊井 司(早稲田大学スポーツ科学学術院教授)
編著: 和田 誠(医療法人社団誠幸会 わだ整形外科クリニック院長)
判型: AB判
頁数: 352頁
装丁: カラー
発行日: 2023年11月16日
ISBN: 978-4-7849-7356-9
版数: 初版
付録: 電子版付き

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スポーツ障害の中でもエコー評価が不可欠な「腱板断裂や肉離れに代表される筋損傷」に焦点を当て,超音波技術と骨格筋解剖学といった基礎知識から,スポーツ現場での評価・治療における活用法まで網羅的に解説した1冊。
・上肢・下肢・体幹の中でさらに細かく部位別に項目を設け,それぞれの正常構造,正常超音波像,代表的な症例におけるエコ―活用法を豊富な画像とともにわかりやすく紹介しています。
・72本の動画も含み,超音波評価の流れをより具体的に理解できます。
・筋損傷(肉離れ)診療を行う整形外科医のほか,理学療法士やトレーナー,セラピストなど,スポーツ医療に従事するすべてのスタッフに有用な情報が満載。
・スポーツ現場・臨床における筋損傷(肉離れ)の評価と治療,スムーズな復帰メニューの策定,そして再発の防止にぜひ本書をお役立て下さい。

目次

1章 総論
1 超音波検査の基礎知識 【松崎正史】
2 骨格筋の構造と超音波像 【和田 誠】
3 画像診断―超音波とMRI 【和田 誠】
4 スポーツドクターによるアスリート診療と帯同現場・外来診療での超音波活用 【深谷泰士】
5 スポーツ現場での理学療法士による運動器超音波の活用法 【疋田佳希】
6 肉離れ(筋損傷)への超音波を用いた理学療法 【工藤慎太郎・池津真大】
コラム① 筋損傷と再生医療 【齋田良知】

2章  上肢
A 腱板後上方部(棘上筋・棘下筋)・小円筋
1 棘上筋・棘下筋・小円筋の正常構造と機能 【望月智之】
2 棘上筋・棘下筋・小円筋の画像解剖(正常エコー像) 【平田正純】
3 棘上筋・棘下筋・小円筋断裂の超音波所見
Ⅰ 棘上筋断裂 平田正純】
Ⅱ 棘下筋断裂 平田正純】
B 腱板前上方部(肩甲下筋・上腕二頭筋長頭腱)
1 肩甲下筋・上腕二頭筋長頭腱の正常構造と機能 【新井隆三】
2 肩甲下筋・上腕二頭筋長頭腱の画像解剖(正常エコー像) 【岩本 航】
3 肩甲下筋及び上腕二頭筋の超音波所見
Ⅰ 肩甲下筋断裂 【岩本 航】
Ⅱ 上腕二頭筋腱断裂(近位・遠位) 【岩本 航】
C 前腕回内屈筋群
1 前腕回内屈筋群の正常構造と機能 【星加昭太】
2 前腕回内屈筋群の画像解剖(正常エコー像) 【宮武和馬・藤澤隆弘・草場洋平・稲葉 裕】
3 前腕回内屈筋群肉離れの超音波所見 【宮武和馬・藤澤隆弘・草場洋平・稲葉 裕】
コラム② 高気圧酸素療法 【柳下和慶】

3章  下肢
A ハムストリング
1 ハムストリングの正常構造と機能 【河上敬介】
2 ハムストリングの画像解剖(正常エコー像) 【和田 誠】
3 ハムストリング肉離れ超音波評価
Ⅰ 坐骨結節~共同腱・半膜様筋腱損傷 和田 誠】
Ⅱ 近位共同腱損傷(大腿二頭筋長頭および半腱様筋の共同腱) 和田 誠】
Ⅲ 大腿二頭筋損傷 和田 誠】
Ⅳ 半腱様筋損傷 和田 誠】
Ⅴ 半膜様筋損傷 和田 誠】
Ⅵ ハムストリング手術症例 【杉本 武】
Ⅶ ハムストリング肉離れ(筋損傷)に対する超音波ガイド下PRP治療 【小林洋平】
コラム③ スプリント動作におけるハムストリングスの筋活動特性 【東原綾子】
B 大腿四頭筋(直筋)
1 大腿四頭筋の正常構造と機能 【江玉睦明】
2 大腿四頭筋の画像解剖(正常エコー像) 和田 誠】
3 大腿四頭筋肉離れの超音波評価
Ⅰ 大腿直筋inner-muscle損傷:筋内腱中心型 和田 誠】
Ⅱ 大腿直筋outer-muscle損傷:外側型 和田 誠】
Ⅲ 大腿四頭筋筋挫傷 【服部惣一】
C 下腿三頭筋
1 下腿三頭筋の正常構造と機能 【江玉睦明】
2 下腿三頭筋の画像解剖(正常エコー像) 【平畑佑輔・笹原 潤】
3 下腿三頭筋肉離れ・アキレス腱断裂の超音波評価
Ⅰ 腓腹筋肉離れ 【平畑佑輔・笹原 潤】
Ⅱ ヒラメ筋肉離れ 【平畑佑輔・笹原 潤】
Ⅲ アキレス腱断裂 【松井智裕】
Ⅳ アキレス腱断裂の保存療法(超音波の積極的活用) 【松井智裕】
Ⅴ アキレス腱断裂の超音波ガイド手術療法 【松井智裕】
D 腓骨筋・足底腱膜
1 腓骨筋・足底腱膜の正常構造・機能と画像解剖(正常エコー像) 【勝谷洋文・鈴木英一・熊井 司】
2 足底筋膜断裂の超音波所見 【勝谷洋文・鈴木英一・熊井 司】
コラム④ 筋損傷と体外衝撃波治療 【前道俊宏・奥貫拓実・熊井 司】

4章  体幹
A 大胸筋
1 大胸筋の正常構造・機能と画像解剖(正常エコー像) 【杉本 武】
2 大胸筋肉離れの超音波所見 【杉本 武】
B 腹直筋
1 腹直筋の正常構造・機能と画像解剖(正常エコー像) 【福田直子】
2 腹直筋・腹斜筋肉離れ(筋損傷)の超音波所見 【福田直子】

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序文

編集の序

「スポーツ障害,筋損傷(肉離れ)を治療しているドクター,スポーツ現場・医療機関で働く理学療法士やトレーナー,セラピストの方々が本書を手にして頂き,解剖に関する正しい知識を確認し,正確なエコー描出を行い,損傷部位の詳細な評価ができ,そして増悪や再発のないスムーズな復帰メニューの策定ができるように役立てて頂きたい。」
その思いが実現する書籍が出来上がりました。是非とも,診察室,スポーツ現場の医務室,救護室で,この本を片手に筋損傷(肉離れ)の評価・治療を行って頂きたいです。
2012年10月のこと,当院に高校生のサッカー選手が受診しました。大腿直筋の肉離れを起こしていました。私はこの日に超音波の短軸でみた“肉離れ像の美しさ”に魅了されました。
大腿直筋は,中央に筋内腱が走行します。この筋内腱を中心に,同心円状にいくつもの血腫が層を成し,まるで「万華鏡」のように見えたのです。
のちに論文で知ることになりますが,この万華鏡のようなエコー所見を“Bull’s eye”と表現している先人がおられました。なるほど,この著者も同じような感動を覚えたのでしょう。「MRIに比べて明らかに分解能が優れている。しかもリアルタイムに評価ができる。将来,筋損傷(肉離れ)の治療における中心的なデバイスになるだろう」と直感しました。
骨折には,たくさんの分類があります。上腕骨でも,近位端骨折や遠位端骨折においても骨折の部位や形態によって治療や後療法が大きく変わってきます。
筋損傷においても同様のことが言え,筋線維がどのような形態で走行し,起始腱や停止腱とどのように連結しているのか,骨にどのような形で付着しているのか,筋損傷を考える上で構造の理解が非常に大切となるのです。
本書では,まず総論において超音波装置の基礎知識,現場のドクターやトレーナー・理学療法士がエコーをどのように活用しているかを紹介しています。各論では,スポーツ障害の筋損傷(肉離れ)の好発部位を項目ごとに解説しました。筋構造を把握できるように解剖と正常超音波像,そして代表的/非典型的な症例におけるエコー活用法とそのコツをわかりやすくまとめました。
また,コラムでは,筋損傷(肉離れ)の治療において是非とも知っておいて頂きたい知識として『筋損傷と再生医療』を順天堂大学の齋田良知先生,『高気圧酸素療法』を東京医科歯科大学の柳下和慶先生,『スプリント動作におけるハムストリングスの筋活動特性』を慶應義塾大学の東原綾子先生,『筋損傷と体外衝撃波治療』を早稲田大学の前道俊宏先生,奥貫拓実先生,熊井 司先生にご執筆いただきました。
今後,筋損傷(肉離れ)のエコー評価が一般化し,損傷形態の詳細評価が進み,論文投稿や学会発表が活発化することで,筋損傷(肉離れ)においても骨格筋ごとの分類が形成され,スポーツ障害における筋損傷(肉離れ)の再発の防止つながればと期待しています。
そして,本書が皆様の筋損傷(肉離れ)の臨床評価や治療,研究の一助になれば幸いです。

謝辞
本書を制作するにあたり,お忙しい中,各項を分担執筆頂いた先生方に心より御礼申し上げます。また,ハムストリングの肉離れの手術見学にお誘い頂く大阪グローバル整形外科病院の杉本武先生,学術的なご指導を頂いております母校である奈良県立医科大学の田中康仁先生,スポーツ障害における筋損傷(肉離れ)の研究でリサーチフェローとしてご指導頂き,本書の監修を頂きました早稲田大学の熊井 司先生に心より深謝申し上げます。

2023年9月
医療法人社団誠幸会 わだ整形外科クリニック院長 和田 誠




監修の序

私はこれまで長年,スポーツ選手の運動器治療に携わってきました。その中で,筋・筋膜,腱,靱帯,関節包,神経といった軟部組織の損傷・障害ほど多様性があり,病態の評価や治療法の選択に労を費やす疾患はないと感じています。軟部組織は,骨や軟骨といった硬組織の治療とは基本的な考え方が異なり,それぞれの修復過程も異なります。整形外科分野では,骨折や変形性関節症といった骨・関節の異常に対する診断学・治療学が先んじている印象があり,次にやっと靱帯修復・再建,腱縫合といった比較的硬い軟部組織である靭帯・腱の話題が続く傾向にあると感じています。それでは筋肉の損傷・障害についての評価や治療法はどうなっていたのでしょうか。
ヒトの身体には大小600もの筋肉が存在し,生命維持には不可欠とされています。動き続ける必要のある心筋や呼吸筋,血管平滑筋から,身体活動を可能とする骨格筋まで様々です。動物としての「ヒト」にとって,ある場所から違う場所に移動することは,生存のために外敵から逃れ,食べ物を探し出し,生きていくために必須の様々な生産活動を効果的・効率的に行うための運動として重要な要素です。その移動に最も必要なエネルギーを産み出す筋肉が損傷した際に,それを正確に評価し,最良の治療法へと導くプロセスに,超音波診断技術が大いに活用される時代になってきたと思います。
本書では,スポーツ障害・外傷の中でも身近な存在である「筋損傷(肉離れ)」に焦点を当て,超音波技術と骨格筋解剖学といった基礎知識から,実際のスポーツ現場での評価・治療における活用法まで,スポーツ医療に従事するすべてのスタッフに有用となる情報が豊富に掲載されています。制作にあたっては多くの臨床超音波技術に優れた先生方にお声がけさせて頂きました。この場をお借りして感謝申し上げます。
筋損傷治療のハンドブックとして,ぜひご一読していただければ幸甚でございます。

「肉離れ」からの完全な復帰を目指したアスリート治療のために
早稲田大学スポーツ科学学術院教授 熊井 司

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