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【識者の眼】「少子高齢化を共に乗り越えるために」小倉和也

小倉和也 (NPO地域共生を支える医療・介護・市民全国ネットワーク共同代表、医療法人はちのへファミリークリニック理事長)

登録日: 2024-12-19

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12月5日から開催されたHealthcare Expo Taiwan 2024のシンポジウムに参加した。これからの医療やケアのあり方を大きく変えうる最新のテクノロジーに触れるとともに、技術の進歩にどのように制度や文化が対応し、社会のあり方が変容していくべきかを欧州や台湾のシンポジストと語り合う有益な機会となった。

日本と台湾は少子高齢化の最前線にいると言えるが、多くの地域もこの問題に直面している。この危機を乗り越えるためには国境を超えて知恵を絞り合うことが必要だ。

米国の経済学者で社会学者であるThorstein Veblenは100年前、非西欧として始めて近代科学技術を活かした国づくりを始めた日本の制度や文化が新技術とどのように関係していくかに興味を持った1)。彼が始めた制度派経済学の中でいう「制度」とは、一般に用いられる用語と異なり、個人や集団の行動を規定する思考習慣そのものを意味するのだという。明治維新や敗戦、戦後の高度成長とバブル経済の崩壊を経て、少子高齢化の危機にさらされている日本社会は、ICTやAIなどの発展を受けて、一人ひとりが幸福な人生を追求できるような制度的・文化的変容を遂げることができるのか。既に注目されて久しいが、まだ決定的な方向性は見えていない。

30年前に家庭医を志したとき、近い将来同じ課題を抱えるであろうアジアなどの国々と協働することは十分に想定されたことであった。子育てや介護をはじめとするケアの社会化を進めつつも、家族、特に女性の無償労働に依拠した「日本型福祉社会」へ向かう方向性を捨てられなかった日本が、今後どのように軌道修正していくべきか、これまでの日本の30年に学んだ国からの視点を参考にしながら考える必要がある。

中でも日本に学びながら急速に取り組みを進める台湾の動きの速さには目を見張るものがある。八戸で10年前から展開しているICTを活用した医療介護連携connect8を参考にした“connect10”の企画は今年の総統杯ハッカソンの最優秀5団体に選出され、日本で実現できなかったAIの活用なども視野に入れている。その取り組みを支援しつつ、より進んだ取り組みに学びながら、今後も互いに高め合う輪を広げていきたい。

【文献】

1)Veblen T:J Reprod Dev. 1915;6(1):23-38.

小倉和也(NPO地域共生を支える医療・介護・市民全国ネットワーク共同代表、医療法人はちのへファミリークリニック理事長)[少子高齢化][軌道修正]

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