60歳代の在日イタリア人患者が、日本語の紹介状とイタリア語の腹部超音波の所見つきで近医から送られてきた。患者はイタリア語と簡単な英語しか話せず、国際診療科に連絡がきた。筆者は帰国子女で放射線科医であり、医学をラテン語に近いポルトガル語で習ったため、スペイン語、イタリア語、英語の医学文書はだいたい理解できる。診察前に検査結果を翻訳して電子カルテに記載したが、肝臓に辺縁が低エコー帯を示す複数の腫瘤が指摘されていたのが気になった。そこで外来に患者の様子を見に行ったのだが、意外にも元気でユーモラスな人だった。片言のイタリア語で翻訳機を使って会話すると、職場は近く、1人暮らしで家族はイタリアにいることが判明した。その後のCT検査で複数の肝転移が認められ、内視鏡にて膵臓癌がみつかった。
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