日本医学会が12月24日、近年注目を集める「新しいがん免疫療法」をテーマにシンポジウムを開催した。この中で、京大の本庶佑氏(現客員教授)の研究室で開発され、2014年にメラノーマに対して世界に先駆けて日本で承認された免疫チェックポイント阻害剤(抗PD-1抗体ニボルマブ、商品名オプジーボ点滴静注)の研究に携わった岩井佳子氏(産業医大教授)が同剤を概説した。
それによると、PD-1分子の本来の役割は、過剰な免疫応答を抑制し、組織傷害から生体を守ること。一方、がん細胞はPD-1に結合する物質PD-L1を発現してT細胞(免疫細胞)の活性化を抑制してしまう。そこで抗PD-1抗体は、この抑制性シグナルを阻害して免疫応答を増強し、がんに特異的なT細胞を増やして、がん細胞を攻撃する。
岩井氏は抗PD-1抗体の利点について、「がん細胞ではなくリンパ球を標的にするので、がんが突然変異を起こしても効果が持続し、さまざまな種類のがんに適応可能」と強調。一方で、奏効率が20~30%であることから、「効かない症例がどうして存在するのかが今後の研究課題」と説明した。