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23価肺炎球菌ワクチン再接種における時間経過の必要性

No.4693 (2014年04月05日発行) P.66

渡辺彰 (東北大学加齢医学研究所抗感染症薬開発寄附研究部門教授)

登録日: 2014-04-05

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

23価肺炎球菌ワクチンは,65歳以上の場合,再接種に関して5年以内は禁止とされているが,副反応が強い理由とその具体的な症状を。
たとえば,全身反応はあるか,あるとすればその理由を。また,免疫過剰のような状態も起こりうるのか。 (山口県 M)

【A】

23価肺炎球菌ワクチン(以下,23価ワクチン)の再接種は初回接種から5年経過後に行う,とされているのは副反応が強いためではない。初回接種から5年を経過する頃になると免疫抗体価の低下が目立つため5年経過後の再接種を勧めているのであり,5年以内に再接種するよりも医療経済的に効率的と言えるからである。また,「禁止」という文言は使われていない。
Mufsonら(文献1)は,23価ワクチンを接種した健康成人における免疫抗体価を接種4年後と5年後に測定したところ,接種直後の免疫抗体価に比べて4年後の免疫抗体価は平均90%であったものが,同じ集団でその1年後(接種から5年後)には平均76%に低下していたと報告している。わが国にも同じような報告がある(文献2)。
肺炎球菌ワクチンの再接種は副反応が強いと誤解されているのには次の理由がある。再接種で副反応が強く出たのは,初期に実用化されて現在では使われていない14価肺炎球菌ワクチンであり,特に2年以内の再接種でアルサス反応が強く出ていた(文献3)ことから,再接種は困難とされたのである。
現行の23価ワクチンは安全であり,実際,筆者へは「23価ワクチンを昨年接種した患者に今年も打ってしまったが大丈夫か?」という質問が複数の開業医から寄せられているものの,いずれの例でも重大な副反応はみられていない。再接種時に全身性の強い副反応が起こる可能性もないとは言えないが,これまでそのような報告はない。主たる副反応は局所の症状であり,しかも予防接種一般にみられるものである。経過観察で消失することが多いが,症状に応じた冷却などの保存的な治療対応が望ましい。
ただし,初回接種から5年後の再接種では副反応が若干増加することが知られている。Jacksonら(文献4)は,少なくとも5年以上前に23価ワクチンを接種した50~74歳の成人513名に対し,5年以上あけて再接種した際の副反応の発現状況を,接種歴がなく新規に接種した901名と比較した。その結果,接種後2日以内に発生した接種部位の痛み,発赤,腫脹,腕の圧痛,腕の動きの制限といった局所反応については再接種群において有意に高頻度でみられたものの,中央値で3日以内に消失したこと,および全身の副反応(悪心,頭痛,発疹,筋肉痛,倦怠感,発熱)の発現頻度は初めて接種した群と再接種した群との間で差がみられなかったことを報告している。
さらにHammittら(文献5)は,23価ワクチンを接種した55~74歳の成人315名(内訳は,初回接種群123名,2回目接種群121名,3~4回目接種群71名で,初回接種から6年以上経過した場合に2回目の接種を行っている)で副反応の有無を観察した。この比較では,2回目接種後に有意に増加するのは接種部位の腫脹(≧4cm),倦怠感,腕の動きの制限と関節痛であるが,1週間~10日後にはいずれも軽快・消失しており,発熱,悪寒,頭痛,発赤,すべての腫脹,腕の痛みなどはいずれも有意には増加しなかったと報告された。さらに,3~4回目接種群では2回目接種後とほぼ同率の副反応発現率にとどまったことも報告している。
以上より,前述のように実際に免疫抗体価が低下する5年を目安として再接種するのが望ましい。

【文献】


1) Mufson MA, et al:Proc Soc Exp Biol Med. 1983; 173:270-5.
2) Ohsima N, et al: Vaccine. 2014;32:1181-6.
3) Borgono JM, et al: Proc Soc Exp Biol Med. 1978; 157(1):148-54.
4) Jackson LA, et al:JAMA. 1999;281(3):243-8.
5) Hammitt LL, et al:Vaccine. 2011;29(12):2287-95.

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