日本医師会は12日、臨床現場の医師の行動指針となる『医師の職業倫理指針』の第3版を公表した。今回の改訂では、近年の遺伝医療の急速な発展を踏まえ、遺伝子を巡る課題に関する記述が大きく拡充された。
かかりつけ医が患者・家族から遺伝子検査に関する相談を受けた場合の対応では、専門家への紹介が必要なケースと不要なケースを紹介。患者・家族への遺伝カウンセリングの基礎知識・技能については、「すべての医師が習得しておくことが望ましい」としている。遺伝学的検査を出生前診断として行うことに関しては、「深刻な倫理的問題がある」と指摘。検査を実施する医師に対しては、妊婦らに検査の特性、得られる情報の診断的評価を検査前に十分説明し、適切な遺伝カウンセリングを行った上で、インフォームドコンセントを得るよう求めている。
第3版ではこのほか、虐待が疑われる患者を発見した場合の医師の対応として、公的機関に積極的に通報することを推奨。「守秘義務は適用されず、医師の責任が問われることはない」と明記している。障害者や認知症患者が入院・入所する医療機関・施設では、身体拘束が発生することにも言及し、患者や入所者に説明のつかない外傷や痣などがあった場合、「原因調査と再発防止に協力すべき」としている。