高齢者高血圧の降圧目標はJSH 2009(文献1)では140 /90mmHg未満であり,75歳以上の後期高齢者では150/90mmHg未満を中間目標とされた。
70~84歳の高齢収縮期高血圧患者3079例を対象としたわが国のVALISH試験(文献2)では,収縮期血圧140mmHg未満の厳格管理群と140~150 mmHgの緩徐管理群の間で心血管イベントに有意差を認めなかった。VALISH試験(文献2)も,特に後期高齢者では150/90mmHg未満の降圧はすべきとのこれまでの見解を支持している。
英国NICE/BHS (文献3)のガイドラインでもHYVET (文献4)の結果から80歳以上の高齢者高血圧の治療の必要性を示し,150/90mmHgを降圧目標としている。米国JNC-8(文献5)では60歳以上で150/90mmHg未満としている。高齢者高血圧の降圧目標は欧米でも再評価され,特にわが国のエビデンスを基盤としたJSH 2009(文献1)の考え方が取り入れられたと言える。以上の背景から,JSH 2014では後期高齢者の降圧目標が150/90mmHg未満に設定された。
1) 日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン作成委員会 編:高血圧治療ガイドライン2009. 日本高血圧学会, 2009.
2) Ogihara T, et al:Hypertension. 2010;56(2): 196-202.
3) NICE clinical guideline:Hypertension;clinical management of primary hypertension in adults. Commissioned by the National Institute for Health and Clinical Excellence. 2011.
4) Beckett NS, et al:N Engl J Med. 2008;358(18): 1887-98.
5) James PA, et al:JAMA. 2014;311(5):507-20.