No.4778 (2015年11月21日発行) P.50
小井土雄一 (国立病院機構災害医療センター 臨床研究部長)
登録日: 2015-11-21
最終更新日: 2016-10-26
災害拠点病院は,阪神・淡路大震災(1.17)の際に,災害医療を担う病院がなかったという教訓に基づいて,1996年から指定整備が始まった。東日本大震災(3.11)の際は,被災4県(岩手,宮城,福島,茨城)に44箇所の災害拠点病院があったが,津波を直接受けた病院はなく,一部倒壊で外来・入院制限を受けた病院はあったものの,基本的にはすべての災害拠点病院が機能した。3.11では,沿岸部の災害拠点病院は傷病者を積極的に受け入れ,重症者を内陸部へ後方搬送した。1.17では,被災地の病院において,後方搬送できなかったことが防ぎえた災害死につながったが,3.11ではその教訓が活かされた。
一方で,新たな災害拠点病院の課題も生じた。課題に関しては,厚生労働省「災害医療等のあり方に関する検討会」〔平成23(2011)年10月報告書〕で検討され,「災害時における医療体制の充実強化について」〔平成24(2012)年3月21日医政局長通達〕において,新しい災害拠点病院の指定要件として示された。新しい要件では,DMATを有すること,救命救急センターもしくは二次救急医療機関であること,地域の二次救急医療機関と定期的な訓練を実施すること,病院機能を維持する施設は耐震構造とすること,自家発電機は発電容量の6割を3日間発電できること,受水槽・井戸設備を持つだけでなく給水協定を結ぶこと,衛星回線インターネットを有すること,病院敷地内にヘリポートを有すること等が条件づけられた。
現在,災害拠点病院は全国に699箇所あるが,3.11の教訓が活かされた,機能の向上が期待される。