厚生労働省の武田俊彦医薬・生活衛生局長(写真)は11月22日、横浜市で保健医療におけるICTの活用をテーマに講演を行った。講演では、厚労省が目指すICT戦略のビジョンとして「保健医療分野におけるICT活用推進懇談会」が10月に示した「次世代型保健医療システム」(用語解説)構築に向けた工程表を紹介し、その実現に「全力で取り組んでいく」と述べた。
武田氏はICTの活用により、保健医療を“供給者目線”から“患者・国民目線”へと作り変えるパラダイムシフトが必要とし、医薬品安全対策における大規模医療情報データベースの重要性を強調した。その背景として武田氏は、「『オプジーボ』のような新しい作用機序の医薬品では、これまでと違い1万分の1程度の頻度で発生する重大リスクの迅速な検出やリスクの精密な比較評価が課題となる」と指摘。大規模医療情報データベースを活用し、レセプトデータや副作用報告データなど各種データを複合的に評価することで、①他剤との比較、②原疾患による症状発現との比較、③安全対策の効果の検証─などが可能になり、「製薬企業や医療機関の人的・財政的なコストを大幅に削減でき、開発促進につながる」との考えを示した。
一方、データベース構築では医療情報の標準化や品質管理を課題に挙げた。医薬品医療機器総合機構(PMDA)が試行運用している「MID-NET」事業では、拠点ごとに処方データや検体調査データなどについて標準化プログラムによる修正を行っていると説明。その結果、ほぼ100%の標準化が行われたことを踏まえ、「高い信頼性が保障されている、日本で最も先進的なデータベース」と位置づけ、「MID-NETの整備充実に注目してほしい」と訴えた。