株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

腫瘤形成性虫垂炎に対するIA【抗菌薬治療後に行う二次治療の新たな選択肢として注目】

No.4833 (2016年12月10日発行) P.52

黒田達夫 (慶應義塾大学小児外科教授)

登録日: 2016-12-07

最終更新日: 2016-12-01

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

小児の腫瘤形成性虫垂炎に対して直ちに手術を行った場合,手術部位感染,イレウス,臓器損傷などの手術関連合併症の発生率はきわめて高く,軽微なものも含めると4割近くにも上るとする報告もある。そこで近年,一次治療として抗菌薬治療を行い,感染の鎮静後に時間をおいて待機的に腹腔鏡下虫垂切除を行う待機的虫垂切除(interval appendectomy:IA)が新たな治療方針の選択肢として注目されている。

実際にIAを行っている小児外科施設は多く,IAの有用性に関する検討の報告が多数みられる。文献的には小児でIA後の合併症率は3.4%とする報告もあり1),IAにより手術合併症の発症を減らすことは期待できる。一方でIAを選択した場合,初期抗菌薬治療と併せた入院日数は,緊急で虫垂切除を行った場合よりも長くなる。IAを行う予定で初期抗菌薬治療を行ったものの十分な効果が得られない率は,小児では0~48%と報告され,虫垂炎の再燃率は20%前後とされる。これは成人で初期治療不成功率7.2%,再燃率7.4%とされるのに対して高い数値である。また,小児で腫瘤形成性虫垂炎として手術された症例の0.5~1.8%で,病理診断がカルチノイドであったとする報告もある。

これらに加えて,患児および保護者のQOLや正常な生活に復帰できるまでの時間,治療費,医療経済的側面などを考慮して,治療方針は慎重に選択する必要がある。しかしながら,近年の一般的な方向性として,小児の腫瘤形成性虫垂炎に対する緊急手術の高い合併症率を重視し,IAを選択することが提案されている。

【文献】

1) Hall NJ, et al:J Pediatr Surg. 2011;46(4):767-71.

【解説】

黒田達夫 慶應義塾大学小児外科教授

関連記事・論文

もっと見る

関連求人情報

関連物件情報

もっと見る

page top