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mTOR阻害剤「ラパリムス錠」承認で難治性リンパ管疾患治療はどう変わるか?─小児リンパ管疾患研究班がシンポ開催【Breakthrough 医薬品研究開発の舞台裏】

No.5088 (2021年10月30日発行) P.14

登録日: 2021-10-26

最終更新日: 2021-10-26

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リンパ脈管筋腫症の治療薬として使用されてきたmTOR阻害剤「ラパリムス錠1mg」(一般名:シロリムス)への「難治性リンパ管疾患」の適応追加が9月27日に承認され、これまで外科的切除や硬化療法が中心だった同疾患の治療に新たな選択肢が加わった。10月17日にオンラインで開催された小児リンパ管疾患シンポジウム(主催:小児リンパ管疾患研究班)では、日本医療研究開発機構(AMED)の「難治性リンパ管異常に対するシロリムス療法確立のための研究」代表者の小関道夫氏(岐阜大大学院小児科学臨床准教授)が実臨床でのラパリムス錠の使い方などについて解説した。

リンパ管疾患は、全身に広がるリンパ管に何らかの異常が生じることで起きる疾患の総称で、多くは先天性あるいは小児期に発症する。

ラパリムス錠の効能・効果に追加された難治性リンパ管疾患(リンパ管腫、リンパ管腫症、ゴーハム病、リンパ管拡張症)は、全身のリンパ管の異常を起因として頚部・胸部のリンパ嚢胞による呼吸困難、気道圧迫、経口摂取困難などを併発したり、大量の胸水や腹水の貯留、骨溶解による様々な症状を来すなど難治性を示すことがある希少疾患。国内患者数は約700例と推定されている。

難治性リンパ管疾患はPI3K/AKT/mTOR系のシグナル伝達の異常が確認されており、mTOR(哺乳類ラパマイシン標的タンパク質)の異常活性を抑制するシロリムスを有効成分とするラパリムス錠が治療薬候補として注目され、開発が進められてきた。

 

手術が難しい場合や希望がある場合に投与


10月17日にオンラインで開催されたシンポでは、シロリムス療法開発を主導してきた小関氏が、ラパリムス錠の治験で確認された効果や副作用、ラパリムス錠をどのよう患者に使用するべきかについて解説した。

リンパ管腫、リンパ管腫症またはゴーハム病の患者11例を対象にラパリムス錠の有効性・安全性を検討した多施設共同第3相医師主導治験では、完全奏効に至った例はなかったものの、投与開始52週後の標的病変の部分奏効(20%を超える縮小を示したもの)が中止例1例を除き6例に上り(奏効率54.5%)、小関氏はこの結果に基づいて承認されたと説明。

主な副作用には口内炎(88.9%)、ざ瘡様皮疹(30.2%)、脂質異常(22.2%)、間質性肺疾患(3.7%)、感染症(63.3%)があり、感染症予防のため子どもにはST合剤の予防内服をする場合があるとしながら、小関氏自身の臨床経験では「中止しなければならないような副作用はほとんど経験していない」と述べた。

どのような患者に使用するべきかについては、一般的な使い方として、状態に応じた治療・管理の選択順を示し(参照)、「頚部(気道周囲)で大きい囊胞」がある場合や「縦隔・腹部」のリンパ管腫でリスクがある場合などは「最初にシロリムス(ラパリムス錠)を投与する」との見解を示した。

「手術や硬化療法のみで治る場合はそうした治療を優先されればいいが、(家族などの)希望があれば、シロリムスを使って小さくして、その後手術という選択もあるかもしれない。手術が難しい方には、まずシロリムスを投与し、小さくなったところで手術をして、落ち着いたらシロリムス投与をやめるという場合もある」(小関氏)

投与上注意することとしては「生ワクチンを同時に打てない」点や「妊婦または妊娠している可能性のある女性は禁忌」である点を強調した。

顆粒剤やゲル剤の開発も進行中

小関氏はシロリムス研究の最新の進捗状況も紹介し、錠剤の開発に続いて「小さい子でも飲めるように」血管・リンパ管疾患に対する顆粒剤の医師主導治験も進行中で、2022年春には終了予定と説明。難治性脈管異常の皮膚病変に対するゲル剤の医師主導治験も進められているとした。

小関氏は、mTOR阻害剤以外にも新しい治療薬の開発が進められているとし、「シロリムスはこの病気に付き合い続けるための1つの選択肢として考えていただくといいと思う」と述べた。

 

越婢加朮湯による奏効例も紹介

シンポではこのほか、広島大病院総合内科・総合診療科漢方診療センター長の小川恵子氏がリンパ管腫(リンパ管奇形)に対するもう1つの選択肢として漢方療法について解説した。

小川氏は「mTOR阻害剤は非常に効果が高いが、副作用などもあり、初期治療や経過観察中の治療としては漢方薬も選択肢に入る」と述べ、越婢加朮湯や越婢加朮湯と黄耆建中湯の併用で奏効した症例を紹介。

漢方療法はエビデンスが確立されていないため、現在、AMEDで「リンパ管奇形に対する越婢加朮湯の効果を評価する臨床研究」を進めているとした。

質疑応答の中で小川氏は、黄耆建中湯を併用する場合の判断について「(効果を上げるためには)越婢加朮湯を増量するのが第一選択。第二が黄耆建中湯併用」と回答。シロリムスと漢方薬の併用についても質問が出され、「私自身は全く問題ないと思っている。本来こういう病気の治療が1つの薬だけで完結するとは考えていない」(小関氏)、「漢方医としても併用は問題ない」(小川氏)と、小関氏、小川氏とも併用可能との見解を示した。

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