小児の鼠径ヘルニアはほぼすべてが,先天的に腹膜症状突起が開存していることによる外鼠径ヘルニアである。稀に小児でも内鼠径ヘルニアを認めることがあるが,その頻度は0.2~0.5%と報告されており,術前診断は難しく,多くは術中に診断される。
診察時にヘルニア脱出が認められれば,診断は比較的容易である。脱出がないときの確認方法としては,腹部を押さえるpumping testや風船を膨らませる方法が推奨されている。触診によるsilk sign,精索肥厚の確認という方法もあるが,信頼性に乏しいとの報告もあり参考所見と考える。超音波検査は熟練者が行えば診断率が高く有用である。診察時にどうしてもヘルニアの脱出を確認できない場合もあるが,鼠径ヘルニアを否定することも難しいため,しばらく外来で経過観察して判断することもある。
嵌頓の危険性があるので,治療の原則は手術である。診断が確実であれば,無理なく予定が組める時期に手術を行う。通常,手術までの数カ月の待機は問題にならないことが多いが,嵌頓の既往がある場合は,後述のように早期に手術を予定する。
新生児期~乳児期に発症した場合は,自然治癒の可能性を考慮して経過観察し,生後9カ月の時点でヘルニアが認められれば手術を予定することが,ガイドラインで推奨されている。
ただし,経過中に嵌頓を起こす場合や,嵌頓のリスクが高いと判断された場合,女児の卵巣脱出の場合などは,早期に手術を予定するのが望ましい。また,筆者の施設のような都市部では,嵌頓時の救急外来受診が比較的容易であるため経過観察が可能であるが,地域によっては救急外来受診が困難であり,嵌頓のリスクを大きく見積もって早期手術を検討することもある。
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