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腸重積症[私の治療]

No.5260 (2025年02月15日発行) P.44

古田繁行 (聖マリアンナ医科大学小児外科主任教授)

登録日: 2025-02-16

最終更新日: 2025-02-12

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  • 腸重積症は緊急疾患のひとつである。早期診断により,非観血的整復が可能である。診断が遅れた場合,観血的整復や腸管切除が避けられず,時に致死的になる可能性がある。病的先進部が存在しない特発性腸重積症は1歳未満の乳児が半数以上を占め,間欠的不機嫌のほか血便を認めることもある。稀に病的先進部が認められ,再発例や年長児では先進部の器質的病変の存在が疑われる。

    ▶診断のポイント

    腸重積症(以下,症例の大多数を占める特発性腸重積症について記す)の典型的な症状は,間欠的不機嫌(腹痛),嘔吐,血便,腹部腫瘤だが,血便や腹部腫瘤は時間が経過すると確認されることが多い。

    前駆症状としてウイルス性胃腸炎による症状をしばしば経験する。初診時に発熱,下痢,食欲不振などの胃腸炎症状が主体であっても,好発年齢では腸重積症を鑑別疾患とする。

    血便を認めずに間欠的不機嫌と嘔吐,活気不良などで受診した乳幼児は,血便の確認のために浣腸を試みてもよいが,本症が疑われたら診断能力が高い超音波検査が推奨される。なお,血便の性状は,イチゴゼリー状とされるが,少量〜大量の鮮血状のことがある。

    X線写真では本症に特異的所見はなく,早期診断のために感度・特異度の高い超音波検査によるスクリーニングを行う。重積腸管の短軸像では複数の層が同心円状に並ぶ“target sign”を示し(),長軸像では中央部が高エコー,周囲が低エコーを呈する“pseudokidney sign”を示す。先進部は直腸にまで及ぶこともあるため,腹部右側に重積像を認めなくても大腸の走行を想像しながら腹部全体を観察する。

    「エビデンスに基づいた小児腸重積症の診療ガイドライン」1)に,重症度評価基準が提唱されている。

    重症:腸重積症またはその原因疾患により,全身状態不良,または腸管壊死が疑われる状態である。集中治療を含む十分な蘇生の後に手術を第一選択とする。非観血的整復は禁忌である。重症例での診断は超音波検査にとどめることが望ましい。

    中等症:全身状態は良好であるが,腸管虚血が疑われる状態である。非観血的整復は禁忌ではないが,腸管穿孔や整復不成功の可能性があるので,造影剤の選択,整復圧,整復時間,整復回数などに注意が必要である。

    軽症:全身状態が良好で,重症・中等症の基準を満たさない状態である。非観血的整復が優先される。

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