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国家目標になりつつある医療AI実装 [お茶の水だより]

No.4835 (2016年12月24日発行) P.12

登録日: 2016-12-16

最終更新日: 2016-12-15

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▶世界トップ囲碁棋士との対局を制した「Alpha Go」をはじめ、今年は人工知能(AI)の進化が強く印象づけられた1年だった。国内医療界でも、膨大な数の医学論文を学習した意思決定支援システム「Watson」が特殊な白血病の遺伝子型を見抜き、適切な治療につながったことが注目を集めた。
▶AIの実装を見据えた研究開発の話題も、今年は目立った。国立がん研究センターは先日、AIを活用したがんの個別化医療の実現を目指す計画を発表。計画では、AI活用による「治療の最適化」が期待できる場として、ゲノム医療などの先端領域だけでなく在宅医療の現場なども挙げている。国がんの間野博行研究所長は、一般臨床での活用は「かなり先」としつつ、「在宅患者の容体の変化を即時に検知し、適切なスタッフに必要な情報を通知する」ような形で、AIを用いた治療・診断技術が臨床現場に浸透していくとの展望を語った。
▶今月7日に開かれた政府の未来投資会議の作業部会では、厚生労働省がAIを用いた診療支援技術について「2020年度までの実装を目指す」と表明。その実現のための布石として、18年度診療報酬改定で「十分なエビデンスのもとにインセンティブ付けの検討を行う」との方針も示している。
▶AI研究を巡っては1950年代以降、3度のブームが発生した。80年代の第2次ブームの引き金となったのは、米スタンフォード大に導入された感染症診断支援システムだった。現在は2000年代から続く第3次ブームのただ中にあり、診療支援技術の実装が国の目標として語られ始めた。医療分野は今後のAI発展の試金石として期待されていると言え、一般臨床現場にAIが普及する日も存外「かなり先」ではないかもしれない。

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