東京23区で最も高齢化率が高い北区は独自の認知症対策に取り組んでいる。2012年から実施している「高齢者あんしんセンターサポート医」事業では、区の非常勤職員としてサポート医を地域のセンターに配置。サポート医が認知症疑い患者への同行訪問を行うことで、適切な医療やケアへつなげる早期支援が行き届く仕組みが整備されつつある。行政と医師会が課題を共有することで生まれたサポート医事業のポイントを紹介する。
独自で認知症支援対策の取り組みを行っているケースもある。東京都北区は行政と医師会が連携して、「高齢者あんしんセンターサポート医」事業を2012年から実施している。
人口33万人の北区は高齢化率25%で、うち半数が後期高齢者。東京23区で最もその割合が高い。中でも赤羽台団地や桐ヶ丘団地という1960年代前半に建てられた大規模集合住宅のある地域は、団塊世代より一世代前の地方から移り住んだ住民が多く、急速に高齢化が進んでおり、2025年問題ならぬ“2015年問題”への対応が喫緊の課題となっていた。また、これらの地域では住民間の地縁や血縁が薄いことから、認知症の発症が見過ごされるなど医療や介護サービスの提供を受けていないケースが散見され、地域包括支援センター(北区では高齢者あんしんセンターと呼称)は頭を悩ませていた。
赤羽台団地の近くで内科の診療所を開業する河村雅明氏(北区医師会副会長)は、「こうした実態を耳にしてはいましたが、直接関与する方法がありませんでした」と振り返る。しかし、自身が2011年に「認知症サポート医」研修を終了したことで、地域への活用方法を模索。医師会所属医師として参加していた北区の「長生きするなら北区が一番」専門研究会で、認知症に対する支援体制作りを提案した。
研究会は北区版地域包括ケアシステム構築を目指す花川與惣太区長の肝煎りで設立。河村氏の提案について北区職員を含めたメンバーで議論した結果、「1人暮らしの高齢者が医療や介護サービスにつながっていない実態の改善」「医療依存度の高い高齢者の退院支援の充実」という方向性のコンセンサスが得られた。
そこで2012年に、認知症サポート医で在宅医療を行う医師を区の非常勤職員に位置づけ、地域のセンターに配置する北区独自の制度「高齢者あんしんセンターサポート医」事業の仕組みが整備された。
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