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米国の終身介護退職者コミュニティ(CCRC)における終末期医療(5)[エッセイ]

No.4846 (2017年03月11日発行) P.70

宮本礼子 (江別すずらん病院認知症疾患医療センター長)

森永知美 (MRG Associates, Inc. 代表)

宮本顕二 (北海道中央労災病院院長)

登録日: 2017-03-12

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  • 今回紹介するところは、より高級な施設です。

    ダナポイント・イージスリビング (Aegis Living of Dana Point)

    風光明媚なダナポイントの海岸沿いにあるアシスティド・リビング(50人)とメモリー・ケア(18人)だけの施設です(写真1)。インディペンデント・リビングとナーシング・ホームがないので、CCRCではありません。入居者の年齢は62~102歳、平均87歳です。3つのホスピスサービス事業所と契約し、入居者全員をこの施設で看取っています。POLST(No.4836、連載2参照)は95%の人が書いています。平均入所期間は、アシスティド・リビングが3~4年、メモリー・ケアが2年です。どちらも年間死亡率は20%で、皆この施設で生涯を閉じます。食事介助が行われ、経管栄養は施設開設から15年経ちますが、1人もいません。



    多くの人は長期介護保険を利用しています。アシスティド・リビングの月額利用料は最低5000ドルで、介護サービス量により料金は変わりますが、7000~9000ドルが多いようです。アシスティド・リビングから年間5~6人がメモリー・ケアに移りますが、移動が嫌な人は個人的に介護者を24時間つけなくてはなりません(1時間20ドル)。メモリー・ケアの月額利用料はアシスティド・リビングの月額利用料より、さらに5500ドル高くなります。予想より長生きして月額利用料が払えなくなったときは退所しなくてはなりません。そのような例は過去に2~3件ありました。退所先のひとつとしてボーディング・ケアという施設があります。そこは6人部屋で食事と簡単な家事の提供があるだけです。

    この施設と契約している医師はいませんが、入居者は裕福ということもあり、それぞれ家庭医がいます。2週間に1回くる医師もいれば、必要時にくる医師もいます。医師を呼ぶと1回最低でも90ドルかかります。ここでは急変時に対応できるように4人の正看護師を雇っていますが、これはほかの施設に比べて多いとのことです。発熱時には医師の指示を受け、稀に病院を受診させることはありますが、大抵は看護師が対応します。静脈注射は行いません。また、骨折の場合は医師の判断で入院させ、その後ナーシング・ホームでリハビリをした後、再びこの施設にもどってきます。

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