本連載61(2017年3月4日号)で検討した介護保険法等改正案は「地域包括ケアシステムの強化」を目的としており、そのためには医療と福祉の連携強化が不可欠です。今回は、3月17日の日本福祉大学地域包括ケア研究会公開セミナーで行った私の報告を紹介します。
第1に、医療と福祉の連携強化は、施設、専門職、および教育の3つのレベルで考える必要があります。
まず、施設レベルについて、医療施設や医師会と福祉施設・事業所との連携が不可欠なことは、言うまでもありません。私は最も重要なことは、お互いが「垣根」を作らないことだと思います。
地域包括ケアに関わっている福祉関係者からは、今でも、「医療機関と連携したいのだが、敷居が高い」との訴えを聞きます。事実、地域包括ケアは2003年に最初に公式に提唱されときには「新しい介護サービス体系」とされ、介護サービスが中核とされたために、医療関係者には消極的姿勢がありました。また、地域包括ケアの源流には「保健医療系」と「(地域)福祉系」の2つがあり、一部の地域を除いて、両者の交流はほとんどなかったという歴史的事情もあります(拙著『地域包括ケアと福祉改革』勁草書房,2017,20-21頁)。
しかし、2013年の社会保障制度改革国民会議報告書が、「医療と介護の連携と地域包括ケアシステムというネットワークの構築」を提唱してから、日本医師会や地域の医師会、病院は地域包括ケアシステムに積極的に参加し始めています。それだけに、今後は、医療・福祉の垣根を越えて、「医療・介護・福祉のネットワーク」という意味での地域包括ケアを目ざす必要があります。
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