No.4857 (2017年05月27日発行) P.71
仲野 徹 (大阪大学病理学教授)
登録日: 2017-05-27
最終更新日: 2017-05-23
このゴールデンウィーク、3度目の槍ヶ岳登山にでかけた。1回目は高校の夏山教室、45年も前のことだ。黄色の布製キスリング・ザックに、紺色のゴム製キャラバンシューズ。今や見かけることもなくなった当時の標準装備は、現在の進歩した登山ギアからは考えられないレベルだった。
中房温泉から入ったアルプス銀座と呼ばれるコースは、本当に見事だった。東釜尾根のずっと向こうに見えた槍ヶ岳の雄姿は今でも思い出すことができるほどだ。それで山にとりつかれて山男に、という訳ではない。感動以上に、しんどかったのである。
それっきり10年ほど登山することはなかったのだが、同じ病院に勤めていた同級生に誘われて、ときどき行くように。行き出すとけっこう面白くて、本格的に学んでみようと登山教室に通うことにした。その卒業登山が2度目の槍ヶ岳だった。
その時は、岐阜県側からの夏山テント泊登山。20代後半だったから、もう30年以上も前のことである。当時の装備は重かったし、インスタント食品もあまりなかったので、荷物は30kg以上。今ではとてもじゃないが歩けそうにない重いリュックを背負って登ったのがなつかしい。
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