【概要】日本医師会主催の医療政策シンポジウムが13日、「高齢化と医療の未来」をテーマに開かれ、パネリストらが政府会議の打ち出す医療分野の規制緩和政策を巡り議論した。
シンポジウムでは、司会の中川俊男日医副会長が、規制改革会議など政府の諮問会議が保険外併用療養制度の拡大を「最優先課題」に掲げていることについて、パネリストら(下掲)に「政府の狙いは何か」と意見を求めた。
ノンフィクション作家の関岡英之氏は「混合診療の全面解禁が本音だろう」と回答。政府会議の議員に企業経営者が多いことから「混合診療解禁を求める動きは、新自由主義経済を信奉する人々のイデオロギー闘争だ」と述べた。
これに関して中村秀一内閣官房社会保障改革担当室長は、混合診療を巡る議論が1990年代から繰り返されてきたとして、「解禁論は消えては蘇る“幽霊”だ。解禁の利点も具体性に欠ける。政府会議は大きな使命感があって主張しているわけではない」と指摘した。
●土居氏「営利企業=利益追求は早計」
シンポでは、医療への営利企業の参入がもたらす影響についても意見が交わされた。
アメリカの貧困問題を著作で取り上げているジャーナリストの堤未果氏は、2000年代のブッシュ政権が実行した規制緩和政策を例示。公教育に営利企業が参入したことにより公立校の予算削減とサービスの質の低下が起こったとして、「日本の医療も市場化すれば(低所得者層の拠り所となる)公のサービスから劣化が始まるだろう」と懸念を表明した。
一方、土居丈朗慶大経済学部教授は「利益追求だけが営利企業の特徴と見るのは早計」と指摘。営利企業の長所として取締役と監査役の相互監視を挙げ、「医療法人の内部統制が今より進み、経営の透明性が高まれば、営利企業を医療機関の経営に入れようという議論をしなくて済む」との考えを示した。