6月に市川海老蔵さんの妻・小林麻央さんが乳がんで亡くなった。民間療法の存在が取り沙汰され、がんの自由診療に注目が集まっている。そこで適切ながん医療の普及に向け情報発信を続ける腫瘍内科医の勝俣範之氏に、がん医療の現状について聞いた。
患者さん自体に変化はありません。むしろ変わったのはメディアではないでしょうか。怪しげな民間療法は以前から存在していますが、最近はかなり悪質なものも増えています。やっとメディアが、私がこれまで訴えてきた“インチキがん医療”の存在を取り上げるようになりました。
今はびこっているのは“免疫療法”と銘打っているものです。何百万円単位と高額ですが効果はありません。免疫という言葉は響きが良い上に、保険適用の免疫チェックポイント阻害薬と混同しやすい点も問題です。免疫チェックポイント阻害薬は抗体治療ですが、巷に溢れる免疫療法と称しているのは、自分の細胞を採って培養して戻すというようなもの。これは何十年も前から大学病院などで研究していたが芽が出なかったものがいまだに行われているのです。
看過できないのは、エビデンスのある免疫チェックポイント阻害薬と併用する形で免疫細胞療法を行い、「これが最先端の医療です」と言っているところがあるのです。しかも「オプジーボ」を通常の10分の1の量とかで投与している。用量通りに投与したら高額なので儲けが少ない上に、副作用の恐れもあるので、こうしたやり方をしている。非常に悪質です。
残り1,701文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する