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外来診療で精神分析的視点を生かすコツ【頭で考えすぎることなく五感と心を使う】

No.4879 (2017年10月28日発行) P.58

内田直樹 (たろうクリニック院長)

藤内栄太 (ときわ台メンタルクリニック院長)

登録日: 2017-10-26

最終更新日: 2017-10-24

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  • 薬物療法主体の治療では行き詰まることを臨床で経験します。一方で,日々の診療において構造化した面接を行う時間を複数確保することは困難です。
    精神分析的な視点を日々の外来診療に生かすコツについて,ときわ台メンタルクリニック・藤内栄太先生にご回答をお願いします。

    【質問者】

    内田直樹 たろうクリニック院長


    【回答】

    分析の訓練を受けていないあるベテランの精神科医の手が「ゴッドハンド」と冗談で呼ばれていた,という昔の話から始めてみたいと思います。その医師は,患者に会って「よっ」と言いながら手を挙げただけで,あとはごく短時間の診察しかしないので,ゴッドハンドと呼ばれていました。これだけなら,ただのいい加減な医師なのでしょうが,その医師は,具合の悪い患者については瞬時に判断してきちんと時間をとって診察していたそうです。その医師は,五感を駆使して直観を研ぎ澄まし,心を使う臨床を行っていたと察します。筆者は,そこに分析的な視点から到達する場所との共通点を見ます。

    精神分析的な視点とは,患者が面接室に持ち込む無数の素材から適切なものを選択し,そこから転移を読み取ることだと思います。これまでの病歴,言葉,感情,服装,匂い,雰囲気,患者からもたらされる逆転移など,こちらの感性で感じられるすべてが選択の対象になりえます。そこから複数の素材を選び組み合わせることで転移を読み取り,分析ではそれを解釈として患者に返します。

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